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「品川区にベンチャー企業が集まるのはなぜ?」 五反田バレー代表理事&アディッシュ執行役員トークセッション

起業イベントレポート

起業でオフィスを構える際、駅からの立地や賃料・ハード面などを考慮することは大切ですが、「どこのエリアにオフィスを構えるか」によってその後の事業に大きな影響を及ぼす場合もあります。
ベンチャー企業が集まるエリアには、どんな魅力があるのでしょうか。

西大井創業支援センターでは、2022年3月14日に五反田のベンチャー企業コミュニティを運営する一般社団法人五反田バレー代表理事・中村岳人氏と、五反田バレー会員企業アディッシュ(株)執行役員経営戦略室長・小原良太郎氏をお招きし、イベントを開催。品川区・五反田エリア周辺にベンチャー企業が集まる理由や、コミュニティがあるエリアにオフィスを構える魅力をお聞きしました。

登壇者情報

中村岳人/一般社団法人五反田バレー代表理事。
新卒で人事・採用領域のコンサルティング会社に入社。営業を経験後、人材紹介事業の立ち上げを担当。
その後、マツリカの創業期に入社し、インサイドセールスチームの立ち上げやカスタマーサクセスチームのマネジメント、プロダクト広報を担当。
マツリカ在籍中に、一般社団法人五反田バレーを立ち上げ、代表理事に就任。
株式会社PatheeでBtoB SaaSの立ち上げとCSチームのマネジメントを経験。
2021年11月に株式会社Hiwayを設立。Co-Founder COOに就任。

小原 良太郎/アディッシュ株式会社 執行役員経営戦略室長
2009年より株式会社オウケイウェイヴにてASPの営業及び広告ビジネスに従事。
2010年よりMarTech SaaSを提供する株式会社Ptmindの共同創業者としてマーケティングおよび事業提携を担当。2018年11月にアディッシュ株式会社に入社し経営管理部にて戦略を担当した後、2020年4月VP of Strategyに就任。2021年1月執行役員経営戦略室長に就任。

五反田バレーとは

五反田バレーは、2018 年7月に理事企業6社(上記スライド参照) が集まって設立した一般社団法人です。
※理事企業の内3社が上場、2社が人員増加などもあり(2022年3月時点)、五反田外へオフィスを移転。

五反田は「周辺に社員が住みやすい」「渋谷や六本木に比べ賃料が安価」「交通の利便性も高い」という理由から、ベンチャー・スタートアップがオフィスを構えるのに適した街です。

しかし同時に、「渋谷や六本木に比べて、ベンチャーのイメージが弱い」「歓楽街のイメージが強い」「企業間や地域内の繋がりが弱い」などの理由から、五反田にオフィスを構えることを躊躇する企業も。

そこで「五反田の企業間で連携し、組織力を持ってそれらの課題に取り組んでいくこと」を目的に、五反田バレーが立ち上がりました。

そんな五反田バレーのミッション・ビジョンは上記の通り。

チャレンジしやすい街・チャレンジする人が集まる街を目指して行政や地元のお店などと連携し、ビジネスの実証実験や協業などを行なっています。

五反田を起点に始まった五反田バレーですが、最近では隣町や周辺エリアの会員企業も増え、品川区内でどんどん広がりを見せています。

正会員:64社
賛助会員:13社(スタートアップではないが五反田にあり、活動を応援してくれる企業)
一般会員:42社(イベントへの参加などプロジェクト単位で参加してくれる企業)
※2022年2月末時点

コロナ前は対面で集まることを主軸に、業種別の勉強・交流会や、地元の中学生を対象とした『五反田ドリームジョブツアー』、地元の飲食店と連携した『五反田ドラフト会議』、複数の企業に共通するエンジニア不足を解消するための『エンジニア向けはしご酒ツアー』など、様々なイベントを実施しました。

コロナ禍ではオンラインでの活動にも力を入れ、オウンドメディア「五反田計画」での発信や品川区主催のアクセラレーションプログラムの協賛などを行っています。

また、商店街のDX支援やオンラインビジネス交流会を開催するなど、その活動は多岐に渡ります。

アディッシュ株式会社とは

2014年設立(株式会社ガイアックスからの会社分割)。西五反田に本社を構え、仙台・福岡・札幌に拠点をもち、全体の従業員数は571名にのぼります。

「つながりを常によろこびに」をミッションに、新しく生まれた市場の拡大を支援、及び新しい市場の拡大によって新たに発生した課題を解決する事業をを手掛けており、カスタマーサクセスによるスタートアップの成長サポートをはじめ、SNS等による炎上・誹謗中傷対策、ネットいじめ問題を解決するサービス、アプリ・ゲーム、シェアリングエコノミー、Fintechなどの領域で様々なサービスを展開しています。

※アディッシュ(株)は、五反田バレーの正会員企業です。

品川区、五反田に会社を構える訳、品川区で起業するメリットは

五反田バレーやアディッシュ(株)の紹介のあと、当施設のインキュベーションマネージャー米澤氏をファシリテーターに、イベントはパネルディスカッションに移ります。


1.五反田バレーに加盟していて良かったこと

小原氏 今日もそうなのですが、五反田バレーと紐付けることで自社単体で活動するよりも幅広いイベント登壇の機会をいただいたり、PRに繋がったりするのは良いことだと考えています。

また創業期は、積極的に外に出ていろんなイベントに参加し、自ら開拓していくような、行動力のあるメンバーが多い傾向があります。しかし、会社が大きくなり人が増えてくるとどうしても社内に篭りがちな方も増えてきます。

ただ、課題は市場(外)にあったり、他社との繋がりで生まれるビジネスもあったりします。五反田バレーという場があって連携できる企業の方々がいると、イベントにも参加しやすく非常に有難いと感じます。

米澤氏 ありがとうございます。やはり五反田バレーというコミュニティがあるのが大きなポイントのようですが、中村さんはどうお考えですか?

中村氏 情報には「知り合いから得られる情報」と「ネットから得られる情報」があると考えているのですが、コミュニティに所属していると知り合いからリアルな情報を得られることはメリットですね。

それこそ、僕は最近起業したのですが、五反田バレーで知り合った起業家の方に創業初期のお金の相談などをすると、ネットには載っていないようなリアルな情報を教えていただくことができました。

米澤氏 顔と名前が見える情報なので、ネットの情報よりも安心感があるのでしょうか?

中村氏 そうですね。また、教える側もにとっても同じコミュニティに所属している人に伝えるという安心感があり、ネット上では公開しづらい情報を教えやすいのではないでしょうか。


2.五反田バレーにこれから期待すること

米澤氏 正会員企業である小原さんにお聞きしたいのですが、今後五反田バレーで「こんなことをして欲しい」ということがあれば、教えてください。

小原氏 私は2社目でIT企業の創業メンバーだったのですが、同業があまりいない問屋街にオフィスを構えて、横のつながりがなくとても寂しかったんですよね。

一方で、その企業は、中国のシリコンバレーと言われるような街(中関村・チュウカンソン)にもオフィスを構えていたのですが、同じビル内に色々なスタートアップ企業が入居していて、毎日夜遅くまで明かりがついていました。急成長を遂げる企業もいて、「自分も頑張らないと」という気持ちになりましたね。

「ブラックにやろう」というわけではなくて、そういう熱さを感じる設計がされていくと、お互いによい刺激になると考えています。

もうひとつ、人材の流動性を高めるようなことをやっていただけるとうれしいです。企業が成長していく過程で求められる人材層って変わっていくんですよね。

創業期は0→1が得意な人が会社を成長させてくれますが、ある程度成長すると1→10が得意な人が必要になってくる。0→1が得意な人が悪い訳ではなく、そういった方が創業フェーズの会社を回り、自分の強みを活かせると良いんじゃないかと。

中村氏 僕も五反田バレーの中で転職した身なので、流動性を上げている側の人間ではあるのですが(笑)。

一般的に、離職率が低い方が良い会社だという世間のイメージも理解できるのですが、会社のフェーズの変化でミスマッチになってしまった方にずっと頑張ってもらうのは、お互いにとって辛い状況ですよね。

積極的に別の会社に移るという風潮を作ることも大事なんじゃないでしょうか。コミュニティとしてそういった話を、もう少しオープンに議論できるようにしたいと考えています。

例えば今、五反田バレーの中で「A社からB社へ転職しました」と言うと、引き抜きのようなイメージを持つ方が多いと思うのですが、そうではなくて「A社が次のフェーズに進んだから転職した。その分A社は別のスキルを持った人が必要になるよね」というように、五反田で働く方々が最適なフェーズの会社に移っていくことをプラスだと捉えるような風潮になったらうれしいですね。


3.なぜ、品川(五反田)にスタートアップが集まるのか?

中村氏 コストが低くて利便性が高いという理由で五反田にオフィスを構える企業が何社かいて、その企業が成長し始めると、他の企業が「五反田良さそうだな」と集まってくる。さらに「知り合いの企業が五反田に移転したので」という理由で移転してくる企業も増え、今では五反田だけでなくその周辺のエリアにもどんどんベンチャー企業が増えてきました。

それと別に、他のオフィス街に比べて物価が安いというのも特徴です。五反田はランチにも飲み会にもお財布に優しいお店が多く、少し調べればお洒落で良い感じのお店もある。「五反田から離れないでほしい」という社員の声もあり、企業が定着しているのではないでしょうか。

米澤氏 仕事をする場所と住んでいる場所が近い、いわゆる職住近接というのが五反田エリア(品川区)の特徴ですが、西大井に住んでいたという小原さん、当時はそういった魅力も感じていましたか?

小原氏 起業をしようと思うくらいなので、仕事大好き人間で朝から晩まで働いていました。当時は恵比寿に通っていたのですが、やはり歩いて帰れる範囲に住めるというのは非常に良かったですね。

弊社の従業員で五反田周辺に住んでいる人も多く、住みやすいという声をよく聞きます。


4.スタートアップの課題・品川区で解決できる理由は?

米澤氏 小原さんは数々のスタートアップをお仕事で見てきたとのことですが、スタートアップがつまづきがちな課題、そして、それらの課題を品川区・五反田だからこそ解決できる理由があれば教えてください。

小原氏 1つ目は情報ですね。先ほどIT企業があまりいない問屋街にオフィスを構えていたお話をしましたが、その街にいても情報が全くないんですよ。となると、情報交換のために渋谷へ出かける必要がありました。

一方で、いろいろな企業が集まっている五反田は、情報交換の場・機会が非常に多いです。とくに、コロナ前はランチやお茶など、気軽に情報交換を行なっていました。

もう1つは、スタートアップが集まると、そのサポートをビジネスとした企業や専門家が集まってくる点です。弊社のようなスタートアップの課題を解決する企業もそうですね。

弊社では様々な業種・業界のカスタマーサクセスをサポートすることで、汎用性の高い情報が集まり、専門性を高めています。

スタートアップって、どうしても自分で全てやりたくなってしまいますし、知見を得るために自分でやった方が良いと言われることもあります。しかし、専門性を持った方と取り組んだり、専門性が高い方に副業で関わってもらったりすることも、課題を解決する上でひとつ、有効な手段です。

米澤氏 様々な段階にあった専門家が五反田バレーにいて、スタートアップにありがちな課題をコミュニティの中で解決できるというのが、五反田バレーのひとつの魅力なんですね。
先ほど、五反田バレーでは行政や商店街と連携しているというお話がありましたが、そういった点でもスタートアップの課題解決に繋がるものがあれば教えてください。

中村氏 事業を軌道にのせ、プロダクトを広めるには実績が重要となりますが、その際、大手企業や特定の領域で昔からある企業の実績を作ると効果的だと言われています。

スタートアップの新規事業は、比較的新しい取り組みであることが多いですよね。歴史のあるレガシーな企業との取引実績を作れると社会に与えるインパクトも大きくなるのですが、地元の老舗や行政ってある程度人間関係を構築しないと連携が難しいですよね。

しかし、五反田バレーではその企業単体で関係性がなくても「五反田バレーの会員企業」として地元企業や行政と連携できるのは大きなメリットだと考えています。また、商店街のどこかのお店で実績が作れると、その商店街の他のお店も積極的に取り入れてくれるようになるので、プロダクトを一気に広めやすいですね。

品川区はそういった連携に積極的で、区の広報などで取り上げてもらえるのも大きなメリットです。


5.起業を目指す人に一言

米澤氏 最後に、起業を目指す人に一言お願いします。

中村氏 僕はまだ起業したばかりなので、一緒に起業の悩みを相談し合える人を増やしたいですね。

小原氏 最近はいろんな形や地方での起業が増えて、すごく起業に挑戦しやすい時代になってきているなと感じます。世の中には本当に様々な課題があるので、それを解決する企業が増えるとどんどん良い社会になっていくんじゃないでしょうか。そうなるのが楽しみですね。

一方で、やはり自分が起業していた頃を振り返ると、本当に辛かったな、と。「お金がまだ振り込まれていないです」と連絡が来て、でも振り込むお金がなくて、なんとか資金調達ができて振り込めたこともありました。本当に胃が痛かったですね。

ただ、そういった経験も含めて過ぎてみると、なんでもないことだったりするものです。仮に起業に失敗したとしても、そういった経験の持ち主を求める企業は増えているように感じます。

起業で得られた経験は本当に素晴らしいものですし、1回失敗したらダメという世の中ではなくなってきているので、大変だと思いますがぜひ多くの方にチャレンジして欲しいですね。

スタートアップが成長しやすい環境が整っている、五反田バレーコミュニティ

五反田バレーでは

●企業間で共通する悩みを解決するためのイベント・施策の実施
●自社単体では難しい広報やPR、イベント登壇などの機会が増える
●気軽な情報交換・専門家との連携
●地域や行政との連携による事業の検証・実績づくり

など、多数のベンチャー企業がひとつの組織として連携することで、様々なメリットがあることが分かりました。これからオフィスを構える方は、物件の条件はもちろん、エリアや周辺企業とのコミュニティにもスポットを当ててみてはいかがでしょうか。他社や地域・行政との連携を求めている方は、ぜひ品川区での起業をおすすめします!