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テストマーケや集客にも有効!クラウドファンディングの活用方法と、プロジェクトを成功させるコツ
事業アイディアを練り、実現へ動き出すタイミングで直面することが多い資金問題。融資や助成金の活用、投資など、様々な資金調達の方法がありますが、そのひとつにクラウドファンディングがあります。
クラウドファンディングは、登記前・開業前でも挑戦できるのが大きな特徴。さらに、広告やブランディング効果、テストマーケティング、ファン作りなど、資金調達と合わせた活用方法があります。
西大井創業支援センター(以下:当施設)で2022年4月26日、【テストマーケティングやファン作りの手段として知っておきたい、クラウドファンディング活用方法】を開催。大手クラウドファンディング運営会社である株式会社CAMPFIREの照井翔登氏をゲストに迎え、様々な観点から見たクラウドファンディングの活用方法、プロジェクトを成功させるためのノウハウを教えていただきました。
登壇者プロフィール
照井翔登(テルイショウト)/株式会株式会社CAMPFIRE CAMPFIRE事業統括部
セールス・アライアンス担当
秋田県出身。2015年より地域特化型クラウドファンディングFAAVOに参画、日本初のふるさと納税特化型クラウドファンディングサイト立ち上げ等に携わる。2018年より株式会株式会社CAMPFIREへ事業譲渡とともに転籍。金融機関や自治体、民間企業と連携した事業開発を主導し、2020年・2021年にMVP獲得。独立行政法人中小企業基盤整備機構にて中小企業アドバイザー、中小企業庁119事業にて専門家なども務める。
クラウドファンディングとは
はじめに、照井氏にクラウドファンディングの基礎について解説いただきました。
クラウドファンディングの語源と、2つの実施方式
「クラウドファンディング」とは、「Crowd(人々・大衆・群衆)」+「Funding(資金調達)」という2つの言葉から生まれた造語です。
「アイディアを形にしたい」「イベントを開催したい」という挑戦者(上図左側)がクラウドファンディングを立ち上げることで、そのプロジェクトを「応援したい」「その商品やサービスが欲しい」と思った人たち(上図右側)から支援金を集めることができます。支援をしてくれた人には、モノ・体験・サービス・お礼などのリターンをお渡しします。
ここで、注意しておきたいのが、あくまでクラウドファンディングは支援を集める仕組みであるということ。プロジェクトを掲載したからといって、自然に支援金が集まるわけではない点を理解しておきましょう。
さらに、クラウドファンディグには、「ALL-or-Nothing」と「ALL-in」という2つの方式があります。
「ALL-or-Nothing」は、目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができる方式です。目標金額に達しなかった場合、支援金を受け取ることはできないものの、支援者へのリターンや、掲載手数料も必要ありません。「開発中のプロジェクトで、世の中のニーズを探る」「テストマーケティングをかねた挑戦」といった場合は、こちらの方式を選ぶのもひとつの手です。
一方「ALL-in」は、目標金額を達成しなかった場合でも、集まった金額だけ支援金を受け取ることができる方式。こちらは必ずプロジェクトの実現と支援者のリターンを実行する必要があり、集まった金額に応じた掲載手数料を支払う責務が生じます。
どちらの方式を選ぶかは「目標金額に達しなかった場合でも、実行できるプロジェクトであるかどうか」や「ファン作りやブランディングなど、資金調達以外の目的で行うプロジェクトなのかどうか」といった観点で検討するのが良いでしょう。
資金調達だけでない、クラウドファンディングの活用方法
上の図のように、クラウドファンディングには資金調達以外にも様々な活用方法があります。プロジェクトによっては「集客」というよりも「仲間集め」「ファン作り」に近くなる場合も。
さらに、ユニークなリターンを設定できたり、達成率が分かりやすく数値化されたりするため、話題を呼びメディアに取り上げられる可能性を秘めています。また、TwitterやFacebookといったSNSとも相性がよいので、拡散効果も期待できます。
クラウドファンディングに挑戦する際は、資金調達と合わせて「どんな効果をどのくらい得ることを目標とするのか?」をしっかり整理しておきましょう。
P o i n t
▶︎クラウドファンディングはあくまでも「支援を集める仕組み」であり、その仕組みをうまく使いこなすというマインドで取り組む。
▶︎クラウドファンディングには大きく分けて2つの方式がある。どちらがよいかは、事業が実行できるのかどうか、資金調達以外の目的でクラウドファンディングをやるのかどうかといった観点で決定する。
▶︎クラウドファンディングには、資金調達以外にもPR・テストマーケティング・集客・販路開拓など様々な効果がある。どのような効果を狙うのか、事前に整理しておく。
続いて、クラウドファンディングを成功させるための具体的な方法をご紹介します。
1)準備期間から支援者を巻き込み、終了後はコミュニティ化
まず注目すべきポイントは、準備期間。募集が始まってから「始まりました!支援してください!」と告知を始めるのでは遅いのです。
準備期間から支援者となりうる人に積極的に情報を届け、巻き込んでいくことが重要です。例えば、一緒にリターンの内容を考えるなど。それらを行うことで募集開始直後に支援してくれる人が増え、「このプロジェクトは盛り上がっていそうだな」と、さらに多くの注目を集めることに繋がります。
また、SNSを活用して募集開始〜終了までの進捗報告やカウントダウンを行うなど、お祭り要素を取り入れて注目を集める方法もあります。
事業のファン作りに繋げたい場合は、プロジェクト終了後の設計が重要です。「リターンを送って終わり」では、せっかく支援してくれた方々との関係が途切れてしまいます。報告イベントを実施したり、次のプロジェクトについて意見を聞いてみるなど、コミュニティ化を図ることで、あなたの事業のファンになってくれるでしょう。
2)支援者の属性を考え、効果的なPR方法を設計する
準備期間から積極的にPRを行うことが重要ですが、具体的にどのような手段を用いると良いのでしょうか。
クラウドファンディングはWEB上のプラットフォームを利用して行うことが多いため、SNSなどオンラインを活用したPR方法を考えがちですが、オフラインの泥臭いPRが支援に繋がることもあります。
例えば、西大井に住む人から支援を集めたい場合は、SNSで拡散するより、チラシ配りやポスター貼りをした方が認知度が高まるかもしれません。
オフラインも含め、目指すターゲットの支援者属性と、ターゲットに合わせた適切な広報手段を設計しましょう。
3)多くの人へPRするだけでなく、個別に「お願い」をする
さらに、1人1人に自身の熱意を伝え、協力を「お願い」することも効果的です。
実際に、「お願いされなかったから」という理由で寄付をしなかったという調査結果もあるほど「お願い」は大切です。
複数人を意識したPRを行うだけでなく、「あなたが支援をしてくれることでこんなメリットがある」と一人ひとりに最適なメッセージを考えてお願いしましょう。支援者となりうる人たちと個別に濃いコミュニケーションを取ることも、成功の鍵なのです。
4)「どんな関わりをしてほしいのか」という視点で考える、リターン設計
支援金に合わせたリターン設計も重要です。
クラウドファンディングのリターンには『定価がある価値』と『定価がない付加価値』があります
『定価がある価値』とは、物理的に存在するもの。例えば、プロジェクトで開発するプロダクトなどがそれに当たります。
反対に『定価がない付加価値』とは、リターンのタイミングでしか提供できないコトやサービスのこと。例えば、オープン直後の特別体験プランや、プロジェクトで生まれるプロダクトに名前を付ける権利など。
この2つの観点を掛け合わせることで、リターンの独自性や特別感の演出につながります。
「このプロジェクトでは支援者にどんな関わりをしてほしいのか」「どんなワクワクを提供できるのか」という視点で考えると、様々なアイディアが出てくるでしょう。
さらに、複数人へのヒアリングを行うことで、様々なバリエーションのリターンを設計しやすくなります。1人で考えるのではなく、支援者となり得る人たちに積極的に意見をもらいましょう。
P o i n t
▶︎支援者の属性を整理し、属性に合わせたPR方法を設計する。さらに、準備段階から一緒にプロジェクトを盛り上げることで、成功するプロジェクトに成長する。
▶︎プロジェクト終了後も、コミュニティ化を意識しタッチポイントを設計することで、事業やプロダクトのファン作りに繋げることができる。
▶︎リターン設計は、「支援者にどんな関わり方をしてほしいか」「どんなワクワクを提供できるか」という観点で考え、実際に支援者となり得る人たちの声も取り入れて設計する。『定価がない付加価値』も取り入れることで、今回しかできない特別感を演出できる。
活用事例からみる、成功するポイント
「プロジェクトを成功させるためには、自分のプロジェクトと似たプロジェクトを実際に支援してみるのも大切」だと、照井氏は語ります。リターンやPR方法など、学ぶことが多いのだそう。
今回は、過去の事例を参考に、プロジェクト成功の秘訣を探りました。
事例①:ケニア発ブランド・RAHA KENYA「アフリカ布で一歩踏み出すきっかけを」
アパレルブランドが立ち上げたこのプロジェクトの目的は、広報・集客・販路開拓。HPでは伝えにくいブランドコンセプトをしっかり発信し、それに共感した人に洋服を購入してもらうことを目指しました。
このように、既に企業力・商品販売実績があるプロジェクトでは「支援」よりも「購入」という側面が強くなるため、『支援を依頼する』という姿勢ではなく、『素敵な商品ができました!』とPRしていることが特徴です。
クラウドファンディングの掲載手数料を広告宣伝費と考え、ブランドコンセプトの認知度拡大にうまく活用しています。
▼実際のプロジェクトページはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/316366
事例②:「自分のまま」でも名字を変えても結婚できる選択的夫婦別姓を一緒に実現しませんか?
こちらは社会課題解決を全面にアピールしたプロジェクトです。
特徴は、社会課題に対する潜在的な興味関心を顕在化させるために様々な工夫をこらしていること。社会的課題は、よくも悪くも、その課題の渦中にいない人にとって『他人事』です。その『他人事』をいかに『自分ごと』へ変化させるかに力を注ぎ、多くの支援を集めました。
1つ目のポイントは、社会課題の基礎知識から説明する構成にしたことです。どの部分が課題となっているのか、誰がどのように困っているのか、予備知識がない人にも分かりやすく伝えるコンテンツを心がけています。
2つ目は、伝わりづらそうな箇所に積極的に図や写真を取り入れた点です。今回のプロジェクトに限らず、図や写真が乏しいプロジェクトは、内容が伝わりづらく、支援が集まりにくい傾向があります。
3つ目は、クラウドファンディングの活動報告機能を積極的に活用し、活発に動いているプロジェクトであるとアピールしたこと。募集期間中ほぼ毎日、多い日は1日2件、達成率の進捗やインタビュー記事、勉強会レポートなど様々な情報を投稿していました。
また、このプロジェクトではSNSも積極的に活用しています。複数の媒体で数々の情報発信を続けたことで、多くの人の目にとまり、著名人からも応援コメントが届きました。
▼実際のプロジェクトページはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/217790
事例③:『松本湯、大改装プロジェクト!』日本の銭湯文化を守りたい!
銭湯の改修プロジェクトとなるこちらのプロジェクト。参考にしたいのは、リターン設計です。
1つ目のポイントは、支援しやすい価格帯からリターンを設定したこと。例えば「お礼のメッセージ」だと500円から支援可能です。
2つ目は、「改装中の見学会」や「開店1時間前から入浴可能な券」といった「今しかない」特別感のあるリターンを設定したこと。『定価がない付加価値』をうまく取り入れています。
そして3つ目は「サウナ入浴」という需要の高まりを捉えたリターンを設定したことです。
この事業の魅力的な付加価値をうまく引き出し、特別感の演出や世の中の需要をしっかりと組み合わせたリターン設計ができています。
▼実際のプロジェクトページはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/402040
事例④:伊豆の入り口函南町に理想のキャンプ場を一から創りたい!
最後に紹介するのは、キャンプ場の新規開発プロジェクトです。
当初、このプロジェクトを立ち上げた人は、キャンプ場を創るノウハウも人のつながりもありませんでした。
まずは、SNSを活用してつながりを拡大してからクラウドファンディングに挑戦し、キャンプ場のニーズ検証と支援者を囲い込むことに成功。
キャンプ場に必要な資金の情報を詳細に公開し、情報の透明性を支援者の安心感に繋げました。
また、応援してくれた人が未来のお客様になるよう、リターンにはオリジナルデザインのキャンプグッズや、支援者のネームプレート付き植樹権を用意。支援額に応じたキャンプ場への関わり方を綿密に設計しています。
▼実際のプロジェクトページはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/459462?list=search_result_projects_popular
成功するためのポイントと失敗するポイント
最後に、クラウドファンディング成功ポイントと失敗ポイントを照井氏がまとめました。以下の画像を参考にしてください。
クラウドファンディングには『支援者1/3の法則』というものがあります。
●3分の1は友人・知人で、最初に支援してくれる可能性が高い層
●3分の1は友人・知人のつながり
●残った3分の1が全く知らない人
支援者の属性は上記のような割合であることが多い、という法則です。この法則を参考に、内側から広げていくようなイメージで、身近な友人・知人からしっかりアプローチしていきましょう。
正しい知識を持ち、クラウドファンディングを活用して事業を促進しよう
ただ単に支援金を集めるだけではなく、ファン作りや集客、ブランディングなど様々な活用方法があるクラウドファンディング。興味がある方は、資金調達以外の観点からも実施を検討してみましょう。
また、クラウドファンディングを実施する際は、今回の照井氏のお話を参考に、目的やターゲットの整理・それに応じたコンテンツやリターンの設計・終了後の支援者とのタッチポイントを意識して、プロジェクトを成功に導きましょう。
起業を促進するためのひとつの手段として、ぜひ正しい知識を持ってクラウドファンディングを活用してみてください。