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個人事業主から法人成りへ。品川経済新聞編集長・宮脇社長に聞く、小さな会社の理想的な経営者像

起業イベントレポート

フリーランスとして独立し、事業が軌道に乗ってくると、次のステージに向けた迷いや課題が生じてくるのではないでしょうか。

「そろそろ1人でできる業務量・幅の限界を感じてきた」
「2023年10月からインボイス制度の導入があり、個人事業主のままで良いのか悩んでいる」
「法人化・組織化も検討しているが、現状(プレイヤー)からどのようにスケールしていけば良いのか分からない」

このまま個人事業主を続けるか、法人化を目指すか、現状からどう法人化を目指せばいいのか。そこで、西大井創業支援センター(以下:当施設)では、2022年6月15日に【個人事業主▶︎法人化▶︎組織化を実現した品川経済新聞編集長・宮脇社長に聞く、プレイヤーから起業家になった経緯と方法】を開催しました。

宮脇さんはなぜ法人化を決意したのか、フリーランスからどのように組織化を進めていったのか、具体的なストーリーとその背景をお伝えします。

登壇者プロフィール

宮脇 淳。1973年生まれ。和歌山県出身。Twitter ID:@miyawaki、Instagram ID:@miyawaki
雑誌「WIRED 日本版」編集者を経て1999年、25歳でライター&編集者として独立。5年半のフリーランス活動を経て、コンテンツメーカー・有限会社ノオトを設立した。外部編集者としてフリーマガジン「R25」の創刊に関わり、ウェブメディア「R25.jp」(当時)の立ち上げに参画した。現在は大手企業を中心に、オウンドメディアのコンテンツ企画・制作を手がけている。自社メディアとして2007年に「品川経済新聞」を創刊し、編集長に就任。2014年にはフリーランス支援として、東京・五反田のコワーキングスペース「Contentz」を設立した。宣伝会議「編集ライター養成講座」講師ほか、全国各地でこれまで40回以上、クリエイターが集まるイベント「#ライター交流会」を実施している。

5年半のフリーランスを経て、法人化に至った経緯とは?

公立の夜間大学(5年制)に通い、日中は様々な仕事をしていたという宮脇さん。大学では編集とは全く関係のない学部でしたが、大学5年生で雑誌「WIRED 日本版」編集部でアルバイトを始めたことがきっかけで、編集者としてのキャリアがスタートしました。

その後、就職活動も行いましたが、雑誌の編集という仕事に楽しさを見出し、内定を辞退。大学卒業と当時に、アルバイトから業務委託としてWIREDでの編集業務を続けます。しかし、約半年後に会社が解散。その直後、他の会社で編集部を立ち上げる話があり、再び業務委託として働いたものの、今度は5カ月で雑誌が休刊しました。新卒1年目にして2度の不運に見舞われ、フリーランスとして独立することになりました。

5年半ほどフリーのライター&編集者を続けたところで、1人でできる業務量や売上の限界を感じ始めます。いつも通り1人でたくさんの業務をこなし、疲れ切ったある夜、ふと「会社を作ろう」と思い立ちました。

そもそも宮脇さんの実家が自営業ということも、決断の後押しになったそうです。生まれ育った商売人家系の環境から、「勤めなくても生きていけるだろう」という感覚が何となくあったといいます。

法人化して、人を雇うまで。

法人化を決断し、2004年、31歳で有限会社ノオトを設立した宮脇さんですが、初めから社員を雇用したわけではありません。最初の9カ月間は1人で仕事をこなし、その間に約1,500万円の売上を達成します(個人事業主時代の年間売り上げは400〜550万円)。一気に売り上げが伸びたのは、個人事業主では契約できない外資企業などからの仕事を受けられるようになったから。この時、法人化によって受注できる仕事の幅が一気に広がることを実感しました。

そして1期目の決算を迎える直前、業務量の急激な増加に限界を感じ、ついに人を雇うことを決めます。雇用形態にはいくつか選択肢がありますが、自身が業務委託であっさり契約を打ち切られた苦い体験もあって、最初から正社員の採用を目指しました。2期目で合計3名を雇い、売上は前期の2.5倍を超えました。

その後、社員数を段階的に増やし、法人化から10年くらいまでは社員数8名前後を推移します。2014年の10周年を機にオフィスを移転し、コワーキングスペース運営を始めるなど、引き続き会社の規模を少しずつ拡張。2022年4月には新卒を含む5名を採用し、2022年6月時点で15名の社員と2名の役員、合計17名の体制を作りました。

法人化して良かった点・良くなかった点

法人化して良かった点は、生活の安定、会社のブランド力向上、各種保険や借り入れ・経費の知識がついたこと。なかでも、ブランド力の向上について、宮脇さんは次のように振り返ります。

「個人名で仕事を続けていたら、そんなに上手くいかなかったかもしれませんね。5年半のフリーランス活動で、質の高い記事を書いてきたという自負はあるものの、一方でスーパーマンのようなすごいライターをたくさん目の当たりにしました。個人として彼らを超えていくことの難しさを痛感したことで、ひとつの会社を作り組織化し、編集プロダクション業界で良いポジションを獲得していく方法を選択したのが、結果的に正解だったと考えています」

法人化して良くなかった点はあまりないそうですが、強いて挙げるなら管理業務が増え、事実上ライターを引退してしまったこと。お金の計算や新人育成、メンバーからの相談など、管理業務は多岐に渡ります。「小さな会社では、社長はスーパー雑用係だと考えている」と話す宮脇さんは、会社でみんなが使う紙コップ選びや購入など、細かな業務も進んで行っています。本来、社長がするような仕事ではないと思われるかもしれませんが、いまの規模の会社では、社員が快適に働ける環境をトップダウンで決めていくことが大切だと考えているそうです。

組織化するために、良い会社となるために、何をしたのか

起業の経緯や現在までの流れをお聞きした後、イベントは当施設の朝比奈IMと宮脇さんのパネルディスカッションへ。「成果物のクオリティ」「採用」「キャッシュ」「ブランディング」という4つの観点を軸に、ディスカッションを行いました。

最初は自力で、徐々に育成を仕組み化ーー成果物のクオリティを、どう担保していったのか

朝比奈IM フリーランスとして個人で活動されていた時は「宮脇さんだから」という理由で仕事を受注されていたかと思います。法人化して他の方が記事を書くことになり、成果物のクオリティをどのように担保していったのでしょうか?

宮脇さん 有限会社ノオトのメイン事業は、コンテンツ(記事)の受託制作です。最初の10年くらいは、全記事を自分でチェックしていました。採用したからには一人前に育てるという想いで、社員が書いた記事に赤字を入れて、とにかく鍛える。職人を育てる感覚に近いですね。ここ数年は社員数がさらに増え、さすがに全ての記事を私ひとりでチェックすることは難しいので、チーム制を導入し、チーム内で記事チェックをし合う仕組みを構築しました。

売上のメインは受託のコンテンツ制作ですが、いわゆる稼がない仕事も大切な業務と考えて、自分たちの仕事のショーケースとして活用しています。自社メディアは、新人育成の場としても非常に重要で、弊社の新人社員には、まず、地域ニュースメディア「品川経済新聞」の記事を書いてもらっています。自分でニュースを見つけ、取材のアポを取り、原稿を書き、それをデスクと私に見せる。毎日これを続けることで、数カ月で取材力が身につくようになります。

五反田バレーのオウンドメディア「五反田計画」の運営やメディア業界で働くクリエーター向けのコワーキングスペース「Contentz」の運営も行っています。本来編集の会社がコワーキングスペースを運営する必要はないのですが、仕事をお願いしているフリーランスの方と交流する場や、新しいフリーランスの方と出会う場として活用しています。

朝比奈IM 売上に繋がる仕事だけでなく、育成に繋がる仕事も大切にすることで、成果物のクオリティ担保やブランディングに繋がっているのですね。

求人媒体を活用したことがないーー社員を大切にすることで生まれる、求人の好循環

朝比奈IM 育成に関して「職人を育てる感覚に近い」とおっしゃっていましたが、時間をかけて一人前となった社員が退職することもあるのではないでしょうか。

宮脇さん 人材の流動性が激しい業界なので、それはそれで仕方ないと考えています。むしろ快く送り出して、独立・転職したメンバーが外の世界で活躍してくれるほうがありがたいですね。「あの人はノオト出身なんだって」「私もノオトに入りたい」という話が業界内で話題に慣ればなるほど、会社のブランディング向上や求人の応募者数増加に繋がりますから。

弊社は採用活動において、設立当初から一度も求人サイトを活用したことがなく、当初はHPの代わりに運用していたブログで募集していました。初期の応募人数は本当に2人くらいでしたね。でも、どんな会社なのかろくに知らずに応募してくる人じゃなくて、たった2人の応募者はものすごく弊社のことを調べてエントリーしてくれるんです。「自分はこういう人を採用したい」という想いをとにかく決意表明することで、紹介してくれる人が出てきたり、応募してくれる方が増えたり、どんどんノオトに合う人が集まってきました。

退職した社員が、バズフィードや文春、朝日新聞やnewspicksへ転職するなど、ステップアップしていったこともブランディングに繋がり、公式サイト、Twitter、Facebookで募集を行うだけで、今ではコンスタントに50〜70人くらいの方から応募いただくようになりました。採用はやはり「あの会社に行きたい」と思ってもらえるよう、会社の地力や魅力をちょっとずつ貯めていくのが遠回りに見えて近道なんだと考えています。

朝比奈IM 退職した方の活躍がブランディングや採用に繋がるのは、退職後も良い関係が続いているからだと感じました。何か秘訣はあるのでしょうか?

宮脇さん 昨夜も辞めた社員とお寿司を食べに行ったので、退職者との関係は良いかもしれません(笑)。

会社の悪口を言われるのって手痛いブランド棄損だと考えています。良くない会社の噂って、どうしても業界内で広まるんですよね。なので、普段から社員の待遇をできる限り良くするのは非常に大事だと意識しています。編集プロダクションといえば、私が若いころは徹夜は当たり前、1週間ほど家に帰れないといった劣悪な労働環境が当たり前で、給料もとにかく低い業界でした。今の時代、そんなことがまかり通るわけがないので、業務量をいろいろ調整したり、お給料は毎年アップしたり。利益がでたらしっかりボーナスも渡したりしています。社員はもちろん、業務委託をしている外部スタッフのみなさんにお金をきちんと出すということは、とても大切ですよね。

また、クライアントとの良好な関係にも気を配っています。これは、クライアントの注文を何でも聞き入れますよというスタンスではなく、たとえば依頼内容が途中から変わってゴリ押し気味になったりしたら、「それは違いますよね」とはっきり伝えるようにしています。クライアントからお金をいただいて仕事をしているのはもちろんですし、きちんと良いコンテンツを作るのは大切なことですが、理不尽によって社員や関係者におかしな負担がかかるのは健全な商取引ではありません。幸いなことに、クライアントは弊社の方針を理解してくだ去っているので、とてもありがたいですね。

あと、弊社の場合は納品物=コンテンツになるのですが、どのクライアントの案件であっても、基本的に弊社のメンバーが書いた記事には、クレジット(署名)を入れてもらうよう交渉しています。一時期、オウンドメディアのコンテンツは、誰が書いたかわからない信頼性の低いコピペまがいの記事が大量に生産されていました。これはとても不健全な状況ですし、それならきちんと実績ある作り手の署名を入れたほうが、クライアントにとってもメリットがありますよね。コンテンツ制作者の名前を掲載することで、社員や外部スタッフの実績がしっかり残り、将来のキャリアにもプラスに働いていくと考えています。

朝比奈IM 素晴らしいなと感じる一方で、いま宮脇さんが仰ったことは、必ずしも全員に響くわけではないじゃないですか。どうしても反りが合わない方などはいなかったのでしょうか。

宮脇さん 今でこそ余裕を持って冷静に話せるようになりましたが、昔はこちらの考えが上手く伝わらず、怒りを感じるようなこともありました。そういう意味では、自分も温厚になったな、成長したなと感じます。「まぁ仕方ないな」と流せる余裕を持つことは、経営者にとって大事なことなのかもしれません

あとはそもそも入り口といいますか、採用基準をきちんと持つのが大事だと考えています。たとえば、品川経済新聞のコンテンツ制作で、デスクや私のフィードバックに対して「でも自分はこうしたいんです」という主張が強い方は育成が難しい。反発するなとはいわないですが、まずは上司の意見をしっかり聞き、素直にフィードバックを受け入れるタイプの人材を採用するようにしています。

結局のところ、自分が立ち上げた会社を良くしていきたいなら、徹底的に社員を大切にするしかないんですよね。伸びている会社を見ていてもそう感じます。取引先を見ていても、いい会社って結構出戻り社員がいるんですよね。そういった会社が目指すべき理想の姿かなとも考えています。

営業をしたことはないーー魅力的な成果物が次の仕事に繋がる、売上の好循環

朝比奈IM 続いて、キャッシュ面のお話を聞かせてください。メイン事業は受託のコンテンツ制作ということだったのですが、営業はどうされているのでしょうか?

宮脇さん 営業はうちの会社に1人もいなくて、実はフリーランスの頃から一度も営業らしい営業をしたことがありません。昔の編集者やライターは、酒場で仕事や人を紹介し合うのが当たり前でしたから。駆け出してお金がなくても、まずは3000円を持って飲み会に参加し、手持ちの企画を話したりして、共感し合えるような方たちと繋がっていきました。

どんな業界であれ、人の縁は自分で掴みにいくものですから、こういったアクションをするかしないかの差はとても大きいと思います。自分がやろうとしている事業に関わる人たち、巻き込めそうな人たちと、いかに出会っていくかが大事です。

ただ、これは知り合いが多ければ良いという話ではなくて、密にやりとりをして、きちんと結果を残し続けることが前提です。編集者やライターって、結局良い記事を書かないとダメなんですよね。折角仕事を依頼されても、成果物が良くなければ1回きりで終わってしまう。魅力的な商品を作ることで、継続を目指すのは、どの業界でも同じではないでしょうか。

ただ、若いころはまだそういったスキルがないので、体力と根性でひたすら乗り切るわけです。駆け出しのころは仕事をパンパンに引き受け過ぎて、誇張抜きで4徹したこともありました。人間やればできるもんだなと思いましたね(笑)。

もちろん、こういった無茶を推奨する気はまったくありません。ただ、会社を作ったり独立・起業するなら、自分が持っている以上の何かを賭けなければいけない瞬間があるんです。そこは戦略的にやった方が良いんですが、私の場合は若さで乗り越えました。いま同じことをやろうとしても、できないでしょうね。

魅力的なコンテンツを納品し続ければ、案件の継続や問い合わせが生まれ、次の仕事に繋がります。こういった好循環が続くことによって、創業18年経った今も営業らしい営業をせず、事業が成り立っています。

朝比奈IM とても理想的ですね。フリーランスで軌道に乗ってから、現在に至るまで売上には困っていない印象を受けましたが、法人化して人を雇用する際、資金調達はされたのでしょうか?

宮脇さん 最初は売上でどうにかなる範囲で採用を始めたので、資金調達はしませんでした。ビジネス内容によりますが、編集・ライター業界は人とPCがあれば仕事が成り立つので、お金を借りる必要がなかったんです。信用が積み重なって、銀行から「借りてください」と言われるくらいになるまで、調達せずに頑張りました。資本がいるビジネスをする場合は、先に資金調達をする必要があると思います。

朝比奈IM その後、資金調達のタイミングはありましたか?

宮脇さん 先ほど「社員を一番大事にする」というお話をしましたが、これは弊社の仕事を受けてくださるフリーランスの方々にも同じで、なるべく良い条件で仕事をしてもらうことを心がけています。できる限り良い報酬をお支払いしたり、振り込みを早くしたり。それらを実現するために、品川区の「中小企業資金融資あっ旋制度」を使って、1,000万円ほど借りたことがあります。利子を品川区が負担してくれるありがたい制度なので、区内の起業家はぜひ利用してみてください。

ビジネス内容にもよりますが、会社がある程度の大きさになってから大きな額の資金調達を行い、きちんと返済することでさらに信用を積み上げていくのも、事業主が選択できるひとつのやり方ではないでしょうか。

プレイヤー経験を活かすことで、ブランディングに強い会社になったーー宮脇さんが考える、会社経営とブランディング

朝比奈IM 宮脇さんは法人化することで事実上ライターを引退し、経営者になられたとのことでしたが、プレイヤーから経営者になったことに関してどう感じていますか?

宮脇さん そもそもライターと編集者の違いを説明すると、ライターはピッチャーで、編集者がキャッチャーなんです。そして、私はどちらかというとキャッチャーが向いていた。なので、ライターを引退したことへの後悔はなくて、昔よりも良い形で仕事ができていると感じています。

そして、私は編集者の顔を持ちながら「経営とはなにか」を常に編集している経営者なんです。編集仕事はいまもプレーヤーとして日々行っていますから、身近な編集者の気持ちはそれなりに分かるんですね。こういった現場感を持ち続けることは、「社員を大切にする」経営に役立っていると感じています。

朝比奈IM なるほど。お話の節々から、宮脇さんは様々な場面でブランディングの観点を取り入れていると感じました。それも編集者という、ブランディングを得意とする職種の方が経営をしているからではないでしょうか。

宮脇さん 確かに、弊社ではコワーキングも運営しているとお話しましたが、一般的なワーキング事業って場所を貸すことで利益を得ることが事業であり、そのために利用者人数を想定して月額利用料を設定しますよね。しかし私は、面積あたりの売上やコストみたいな話にはあまり興味がなく、編集者として自社のブランディングに活用しようと考えました。

「Contentz」を立ち上げた2014年は、地域密着型のコワーキングスペースが増えてきたものの、職種に特化したものはまだあまりありませんでした。そこで、「うちは優秀なキャッチャー(編集者)がたくさんいるので、ピッチャー(ライター)の皆さん投げ込みに来てください」というコンセプトで、メディア業界のフリーランス向けの会員制コワーキングにしました。決して大きな黒字にはならないのですが、会員さんの月額会費で物件の家賃は賄えていますし、たくさんのフリーランスの方々との交流・出会いの場になりました。そもそも、コワーキングスペースを運営している編集プロダクションなんて、世の中にほとんどないんです。その物珍しさもあって、本来はクライアントに伺って打ち合わせなどをするべき立場なのですが、むしろ見学したいと足を運んでくださるケースがとても増えました。

朝比奈IM 稼ぐ事業としてではなく、人との繋がりを生んだり、次の仕事に繋げるためのコワーキング事業なんですね。最後に、会社経営におけるブランディングとは何か、お聞かせください。

宮脇さん 繰り返しになりますが、社員を大切にするのが企業ブランディングの第1歩であり、ベースだと考えています。そして、自社の理念を理解してくださるクライアントさんと長期にわたって一緒に仕事できる状況をつくっていくことが大切ですね。

あとは、正直でいることは一番の武器になるとも考えています。誤魔化したり嘘ついたりせず、誰に対しても基本的に全て正直に伝えます。

たとえば、クライアントに「この見積もりはなぜ前回より高いんですか?この項目は何ですか?」などと聞かれた時は、「前回よりこういう労力がかかるからです。あと、ライターさんにこれだけ払いたいので、これだけもらわないとみんな不幸になってしまいます」と正直に伝えます。社員にも会社のコア情報はきちんと公開しています。

正直でいること、そして質の高い商品を納品することの積み重ねが信用に繋がり、その会社の信頼度が上がる、つまりブランディングの向上に繋がっていくのではないでしょうか。

プレイヤーでありたいか?経営者になりたいか?を考え、どちらの場合も関わる人を大切に、好循環を生み出そう

宮脇さんは以下のポイントを大切にすることで、仕事の幅を広げ、法人化を果たし、今現在も成長し続ける素晴らしい組織を作りました。

●お金がない時でも、必要な人と密に繋がるためのアクション・投資は惜しまなかった
●自分が考える企画や、一緒に働きたい人材など、自身の想いをオンライン・リアル双方で発信し続けた
●稼ぐ事業だけでなく、稼がない事業も大切にすることで、育成や繋がりづくり、ブランディングへ繋げる
●質の高い商品を納品し続けることで、成果物が次の仕事を呼ぶ好循環を生む
●何より、社員を1番大切にすることが、ブランディングの第1歩。全ての面で好循環を生む
●社員を大切にするために、時にはクライアントにも意見する。そして、理解があるクライアントと仕事をする
●プレイヤー経験があるからこそ、得意なブランディングを活かした会社経営をする
●正直であることが、最大の武器。社員にも、クライアントにも正直でいることが信用に繋がる

一方、ライターとしては引退するなど、フリーランスの頃と業務内容や視点も大きく変わっています。法人化を検討している方は、宮脇さんのお話を参考に「自分は経営者になりたいのか?」「プレイヤーを続けたいのか?」「プレイヤーを続けながら経営も行いたいのか?」など、ぜひ検討してみてください。法人化を選択する場合は自身のプレイヤー経験を強みに、自分だからこそできる会社経営を考えてみるのも良いでしょう。

また、宮脇さんのお話には、人として、ビジネスマンとして大切なことがたくさん含まれていました。フリーランスを続ける方も、法人化を目指す方も、参考にできる部分を今日から取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと、事業や売上により良い循環が生まれるはずです。