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「多くの人に傾聴を伝えずにいられなくなった」ーー原体験から起業した傾聴セラピスト、fred・則武さんの起業ストーリー

2401会員インタビュー

2022年2月1日にオープンした西大井創業支援センター(愛称:PORT2401)。2022年10月現在、第1期〜第3期合わせて約20名の月額会員の方々が活動しています。

年齢・事業内容ともに多様な皆さんですが、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。

第2回会員インタビューとしてお話をお伺いしたのは、第1期会員の則武(のりたけ)優子さん。傾聴セラピーを軸に、fredという屋号で活動しています。起業のきっかけや詳しい事業内容、今後の展望などを聞きました。

「パートナーを支えたい」という想いで始めた、傾聴

fred・則武優子さん

―― 則武さんは現在、どのような事業をされているのでしょうか?

心理カウンセラーのお仕事をしています。人間関係や心の問題で悩んでいる方や、精神疾患を持つ家族を支えている方を対象とした心のケアです。 さらに、「傾聴というコミュニケーションがメンタルケアに役立つツールであること」を多くの方に知っていただきたく、傾聴に力を入れたセラピーや傾聴を学べる講座なども提供しています。

―― 傾聴セラピーとはどのようなものなのでしょうか?

一般的なカウンセリングは、相談者さんの悩みを聞くことで悩みの解決や症状の緩和を目的とすることが多いのですが、傾聴セラピーはとにかく心のモヤモヤを話し、スッキリしてもらうことを目的としています。「うつを予防するもの」と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。

―― 確かに、心の中がスッキリするまで話し切る機会って、あまりないかもしれませんね。則武さんはなぜ、傾聴セラピーでの起業を決めたのですか?

数年前の話になるのですが、結婚後にパートナーが躁うつ病(正式には双極性障害)の診断を受けまして………。一緒に生活をしているので「何とかしないと!」と考え、自分なりにいろいろな方法で彼をサポートしました。でも、良くなるどころか悪化してしまい、ついにお互い倒れてしまったんです。

「もう2人で死んでしまおうか」と考えるほどしんどい状況に陥ったのですが、「それは絶対にダメだ!」と思い直し、現状を打破する方法を考えました。私自身もストレスでボロボロではありましたが、きちんと心理学の資格講座を受けながら、サポートをしていくことにしました。

そこで学んだ傾聴というコミュニケーションを意識的に行ったところ、とても効果があったんです。一時は自殺願望まで抱いていたパートナーが、会社に行けるようになるまで回復しました。「傾聴ってこんなに人を癒すんだ」と発見し、多くの人に伝えられずにはいられなくなって、お仕事にしようと考えたんです。そして、fredの事業を立ち上げました。

まずはカウンセラー同士が連携できる仕組みを作りながら、傾聴を世の中に広めたい

fred・ロゴ

―― ご自身の原体験から始められた事業ということですが、今後はどのように展開していきたいですか?

将来的には、心の悩みを気軽に話せる場所を作りたいと考えています。それは、もしかしたら何かの施設になるかもしれないし、お店という形になるかもしれません。お酒の提供がないバーや、コミュニティ要素が強いカフェのようなイメージですね。

「ちょっと誰かと話したいな」「誰かに話を聴いて欲しいな」など、心がモヤモヤした時にフラッと来ていただいて、店員と話すことで傾聴セラピーを体験していただけたら良いなと考えています。

―― そういった場所があると、多くの方が救われるでしょうね。

そうですね。この夢を実現するために、直近の目標は、fredの傾聴講座を通して傾聴ができるカウンセラーを育成していくことです。さらに、受講したカウンセラーにお仕事の場を提供したり、カウンセラー同士の繋がりを強化したりしたいと考えています。

現状、カウンセラーという職業は、個人で仕事をするハードルがとても高いのです。そもそも、生活の基盤となるレベルの相談件数を個人で受託することが難しいという問題があります。

さらに、心の問題は様々な要因が絡み合った複雑なケースが多く、カウンセラー1人の専門知識だけで解決することが難しい。カウンセラー同士で連携することで、より根本から心の問題に取り組んでいけると考えています。

ーー 傾聴に注力しつつも、最近は新たなセッションも始めたと聞きました。

はい。ここ1年くらいで、HSPの方からのご相談が増えたので、そういった方々へ向けた新しいセッションを始めました。

※HSP(ハイリーセンシティブパーソン)とは、とても敏感・動揺しやすい人のこと

HSPかどうか分からないけど、日常の些細なことが気になってすぐに疲れちゃうとか。自分はダメだなとすぐに落ち込んでしまうとか。そういった生きづらさを感じている方へのセラピーも含めた、人生を生きやすくするセッション内容になっています。

※詳しくは、fredのHPより

起業家として、西大井創業支援センターに入居した理由

ーー 少し話が変わりますが、こういった事業の活動拠点として、西大井創業支援センター(当施設)に入居されたのはなぜですか?

西大井創業支援センターに入居する前は様々なコワーキングを利用していたのですが、やはり「仕事場」という側面が強く、入居者同士の繋がりやコミュニケーションが全くなかったんですよね。

当初はそういうものだと考えていたのですが、西大井創業支援センターの募集を知り「品川区が運営している」という確かな土台と、アットホームで何でも相談しやすい雰囲気に、魅力を感じました。また、月に1度、中小企業診断士の資格を持ったインキュベーションマネージャー(以下、IM)との面談があり、継続的に事業の相談ができる環境も心強いと感じました。

ーー 実際に入居されてみていかがですか?

やはりIMと相談ができるという点は、事業を継続展開していく上で、とても心強く感じました。事業内容について判断や選択を迷っている時に、背中を押してもらえる感じだったり、自分では気付けなかった点を教えていただいたり。日々、とても有益なアドバイスをいただけるので、一つずつ確信しながら事業を進めていける感覚があります。

それに、同じような立場の入居者の方々と積極的にコミュニケーションできる環境を作ってくれているのもありがたいですね。ただオフィスに行くだけではなく、そういった横の繋がりを持てるのは、事業を進めていくモチベーションアップにもなっていると感じます。

その上、以前使っていた民間のコワーキングスペースと比較すると、施設がきれいで充実しています。ポストが備え付けられており、住所登記も可能ですから。こういった利点と施設利用額をトータルで考えるとコスパが非常に良く、満足度もとても高いですね。

ーー 最後に一言、事業にかける今後の想いをお願いいたします。

現代において、心の問題は大きな社会問題です。多くの方に傾聴というコミュニケーションをお伝えすることで、ぜひ活用していただきたいですね。傾聴は人間関係にも活かすことができ、誰かを傷つけることのない優しいコミュニケーション方法ですので、将来的には学校や教育の場など、様々な場に広めていきたいです。


ご自身の実体験から傾聴に出合い、起業に至った則武さん。事業内容にお悩みの方は、これまでの経験を振り返り「強く人に伝えたい何か」を掘り起こしてみるのも良いかもしれません。

則武さんは「慶應義塾大学SFC研究所 みらいのまちをつくる・ラボ」さんが運営するFMしながわの番組(7月放送回)に、西大井創業支援センターとのコラボ企画でゲスト出演してます。番組でも、事業内容や今後の展望についてお話いただいているので、同放送のバックナンバーをぜひ視聴してみてください。

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