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「人材集めで課題感」「マネジメントが難しい」学生起業家の悩みを共有した、「第13回オープン起業カフェ」イベントレポート

起業イベントレポート

「ここから始まる起業の航路」をテーマに、起業家をハード・ソフトの両面からサポートする西大井創業支援センターPORT2401。その一環として、起業に役立つ情報をゲストから伺う「オープン起業カフェ」を毎月開催しています。

4月9日の第13回起業カフェは、「学生×起業」のテーマで開催。野田賀一センター長をファシリテーターに、PORT2401の利用会員や元会員など、計7人が参加しました。

当日は、トークテーマに沿って、学生の起業ならではの悩みなどを共有。解決策について意見を出し合い、交流しました。その様子をダイジェストにしてお届けします。


情報収集ってどうしてる? 主流はTwitter資金調達を見据えたFacebookの利用

まずご紹介するのが、起業に関する情報収集の仕方について。どの参加者からも共通して挙げられたのはTwitterの活用ですが、他にもさまざまな方法で情報を集めていました。

高校生の頃にWebサービス開発コンテスト「アプリ甲子園」で優勝した経歴を持つ東京大学在学中の上坂進之祐さんは、YouTubeや、カリフォルニア州のソフトウェア企業が運営するブログサービス「Medium」を利用すると言います。Mediumでは、日本でまだ出回っていない最新の情報をいち早くキャッチすることが可能です。

また、東京医科歯科大学在学中で歯科医師を目指しつつ、患者に向けて医療情報を提供するためのサービスを開発する松村勇佑さんは、メディアプラットフォーム「note」から資金調達の方法などをキャッチすることもあるそう。起業を目指し始めた頃は、高校の先輩で起業の経験がある人にFacebookでアポイントを取り、ロールモデルをさぐっていったと言います。

和田直大さんは東京電機大学大学院を卒業後、「Web×医療」による医師のサポートを志し、心臓循環シミュレートアプリ「SimArthur」を開発・提供。入力した身体パラメータを瞬時に計算、グラフ化して心臓循環の理解を助けるサービスです。情報収集の仕方について深く意識はしていないと言います。

「Twitterは、自分がクリックした記事の傾向からおすすめのツイートを表示してくれる。大事なのは情報を自分の中にどうインプットし、能力として活用するか。例えば外出中に技術系の気になる記事を見つけたらブックマークしておいて、PCがある環境で読みながら、実際に手を動かして技術を試すようにしています」(和田)

株式会社ユーザベースの寺田麗末さんは多くのスタートアップ企業をサポートした経験から、「学生起業家に限らず、スタートアップ業界での情報収集はTwitterが主流」だと語ります。そのほかによく使われているのはFacebookだそうです。

「資金調達の要となるベンチャーキャピタル業界は、誰の紹介かというコネクションが大切です。Facebookは経歴もわかるし、誰とつながっているかが可視化されている。メッセンジャーでグループも作りやすいですね。Facebookを『30代以降が使うアプリ』と認識している学生も、起業に向けて利用していることがあります」(寺田)

いかに効率よく情報をキャッチしていくか。収集した情報を、自分の中に知識としてどう蓄積させていくか。それぞれの個性が光る話題となりました。


チャレンジ好きをアピールできる、「学生起業家」の肩書

トークテーマの一つとして取り上げられた「学生の間に起業してよかったこと」では、「学生で起業する経歴は珍しい上に、『元学生起業家』という一生使える肩書が残る」という意見が上がりました。

「『チャレンジするのが好きな人間なんだ』と理解してもらえることにも、価値があると思います」(和田)

社会人になってから起業を始める人が多い中、学生起業家はやはり目立つ存在。大学卒業後にどんな進路を描くのか、注目を浴びる部分はあるようです。

一方で、就職するメリットについても話題になりました。歯科医を目指しながら医療業界向けのサービスを開発する松村さんは、「現場のリアルな悩みをキャッチして、サービス開発に利用できる」点をメリットに挙げます。卒業後の進路と開発するサービスが密接に関係しているからこその意見です。

他には、「チームマネジメントで生じる課題の解決法を会得できる」という意見も上がりました。

「最初は自分一人でプログラムを書いていればいいけど、規模が大きくなってくるとチームで動く必要が出てくる。そうなると、マネジメントスキルは必須。相手のモチベーションを維持する方法など、会社で学んだノウハウを活用できるはずです」(和田)


チームで動くために必要なコスト、マネジメントの難しさ

マネジメントスキルへの課題感は、参加者全員が共通して抱いている様子。中でも、現在6人でサービス開発に取り組む松村さんは、これまでの道のりで難しさを感じたと言います。

「マネジメントスキルについては、起業家とお会いしたらまっさきに相談するくらい大きな課題です。メンバー募集で『うちの事業に必要だから来てください』と声をかけるのは簡単だけど、相手のモチベーションが続くかは別問題。本人が今後やりたいことに活かせる形で参加してもらうよう意識しています」(松村)

松村さんのチームメンバーは、半分が歯科業界を目指す人たちで、大学の後輩も在籍しているそう。信頼関係が確立しているためやりとりはスムーズですが、それでも「コミュニケーションには気を使っている」と言います。現在は、チームをまたいだミーティングを定期的に行うことで、より円滑に開発を進めようとしています。

一方で、多くのスタートアップ企業を見てきた寺田さんは「はじめは無理してチームメンバーを増やさなくていいのかもしれない」と指摘します。その理由について、プロダクトを作るために焦って大量にメンバーを集めた経験を取り上げました。 

「集めたメンバーの中に、作業の進みは悪い割に意見だけはすごく言う人がいて、チームが混乱したことがありました。メンバーが増えればコミュニケーションコストが生まれます。起業は速さが勝負なのに、そこで足止めを食らうのはもったいない。メンバーを集めるのであれば、お金や技術だけではなく、サービスや起業へのビジョンに共感してくれる人を集めたほうがうまくいくと思います」(寺田)

また、チームを引っ張る立場として、期間と目標を定める重要性についての意見も。

「ゴールの見えないマラソンを走りづけるのは、誰にとってもつらいもの。だからこそ、『3カ月でリリースしよう』『2カ月間は顧客の反応をみよう』と期間を決めて開発に臨むことが大切です。企業としての成長が目に見えてわかる上に、チームの結束も強まると思います」(寺田)


人材集めの課題解決に向けて

最後のテーマは、人材集めについて。

「(自分もメンバーも)学生だと、お願いできる相手の技術力が限られたり、相手のやる気が持続しなくて辞めてしまったりという問題があります。継続して開発できるメンバーが集まらないことに課題を感じます」(上坂)

この悩みへの解決策として、会場からは2つの案が出ました。1つ目は、多くの人の前で「起業のために人を集めている」と訴えかけること。

「自分たちが思っている以上に、起業ってキラキラと輝いて見えるもの。サービスを作ることに憧れる人は絶対にいるから、それを理解したうえで行動に移すのがいい。例えば、サークルの呼び込みのように100人の前で話をすれば、そのうちの1人~2人は興味を持ってくれるはず。まずはそこからスタートしてもいいと思います」(和田)

2つ目は、起業の手伝いをしたい層を探すこと。

「会社勤めをしている20代後半~30代前半は、自分のやりたいことと、会社では実現できないことの境目がわかり始めてきます。だから、30代前半で副業などから起業に踏み出す人もいる。そういう人たちは、誰かの起業を手伝って、将来的に自分の目標を実現するきっかけにしたいと思っています。そういう層からメンバーを探すというのはありだと思う」(野田)

「しかし、社会人のメンバーを学生がマネジメントしやすいかは別問題。作業をお願いする際の心理的ハードルは生じてしまうかもしれません」(寺田)


「学生×起業」には、学校の友達と悩みを分かち合えない孤独感も

このほか、大学や大企業と契約するときの大変さや、弁護士などの専門家にどのタイミングで相談すべきかなど、話題は多岐にわたりました。

学生起業家は、周りの友人が就職活動や試験・資格の勉強に励む中、独自の道を切り開いていかなければなりません。大学に起業サークルがある場合でも、入会が難しかったり、サークル自体があまり機能していなかったりで、起業に関する相談相手が見つからず孤独感を味わうこともあるのだとか。

大学以外の場所で学生起業家としての経験がある先輩と話す機会は、貴重なものです。共通の課題を共有した今回の起業カフェは、解決策を見い出す一つのきっかけとなりました。