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「死ぬときに後悔しないために」 U-29明日から起業できる考え方スペシャルトークセッション

品川区立西大井創業支援センター(PORT2401)は9月27日、U-29世代のクリエイター支援者で動画制作ディレクターのtape代表・河合将太郎さんと、コミュニティ型メディアを運営する株式会社ユニークの代表取締役・山崎貴大さんをゲストに、「明日から起業できる考え方やマインドセット」を学ぶトークセッションを行いました。河合さんの起業の変遷から、自分のやりたいことをどう実現させるのかを紐解いていきます。

〈登壇者プロフィール〉

河合将太郎(かわいしょうたろう)氏/tape代表

2017年に新卒でウェディングプロデュース会社に就職。ウェディングプランナー、関西地区の採用担当、店長などを経験する。2020年にオンライン動画制作スクールの運営会社へ転職。新規事業開発、クリエイターのコミュニティ運営を経験する。2022年に個人事業主として、クライアントが0の状態で独立起業。コンテンツディレクターとして、クリエイターとチームを組成して新規開拓を行い、現在は主にSNS用の動画制作事業を提供している。クライアントには大手アパレルブランド、首都圏に22店舗を展開する高級焼肉店、73年の歴史がある光学機器メーカーなどがある。
https://www.instagram.com/taro_0524/ https://www.instagram.com/tape_portfolio/ https://note.com/taro_0524

山崎貴大(やまざきたかひろ)氏/株式会社ユニーク代表取締役

2015年に文教大学国際観光学科を卒業後、旅行会社へ就職。退社後、リヤカーを引いて国内1000kmを徒歩移動し、囲炉裏の良さを広める旅を敢行。株式会社オンリーストーリーに転職後、インターンMVP、メディア編集長、新規事業担当などを経験し、広報へ着任。副業先のひとつであったWEBメディアを起点に株式会社ユニークを共同創業し、代表取締役に就任。WEBメディア、オンラインサロン、法人支援事業を展開する。
https://u-29.com/
https://twitter.com/yama_u29


動画を作る必要性からヒアリング

山崎貴大さん(左)、河合将太郎さん

山崎:今日はよろしくお願いします。河合さんは、SNSの動画制作事業を提供しているんですよね。

河合:アパレルや飲食店などのほか、ウエディングで使用する動画も作成しています。一般的に、動画クリエイターって撮影と編集をするイメージだと思うんですけど、僕の場合は、クライアントの希望をヒアリングして、適するクリエイターとチームを組んで一緒に作るんですよ。

山崎:事業でのこだわりの軸を教えてください。

河合:まず、「動画を作る必要があるか」を聞くようにしていますね。動画って、あくまで手段なんですよ。何を伝えたいか。そのために動画は適しているのかどうかから一緒に考えます。

山崎:メンバーはどのくらいいるんですか?

河合:クリエイターはメインでお願いしている方が10人くらいですね。それ以外にも、クリエイターの集まりなどに参加して、常にいろんなクリエイターと知り合う環境を作っています。

山崎:クリエイターってあまり身近にいないんですけど、どうしたら会えるものなんでしょう。

河合:SNSで連絡をいただいたり、既存のクリエイターから紹介してもらったりすることが多いですね。

起業の経験は、再就職で失敗として映らない

山崎:河合さんはなぜ独立したんですか?

河合:やってみたかったんですよね。独立して1年経つんですけど、考えていたのは社会人1年目の頃から。その時期から、独立に役立つスキルを身に付けようと意識してきました。転職した動画制作スクールの運営会社を辞めようと考えた時、「ここで一度起業しよう」と決めました。もし失敗したとしても、再就職するときに失敗の理由を言語化して『ここで働きたい』と伝えたら、失敗も活きてくるんじゃないかと思ったんです。

山崎:起業の経験って、再就職で失敗として映らないですよね。

河合:それに、母から「いつも口ばっかりだけど自分自身は何ができるの?」と言われ続けてきたから、口だけで終わるのが不安だったんです。

山崎:独立の準備では資金とかメンバー、事業アイデアとかいろいろ考えますよね。 河合:僕の場合は、「こうしたいな」という感情が起点になったんです。そこから現実にどう落とし込むかを考えましたね。資金の話も、貯金が全然なかったから0(ゼロ)円でできるビジネスモデルを考えてました。

山崎:アイデアとか事業領域は考えました?

河合:そうですね。動画という商材を選んだのは、動画スクールの運営に携わっていたこともきっかけではありますけど、動画が高額商材だったことも大きな理由です。

山崎:行動に対する対価が大きいのは、やりがいも感じられるし運営的にもいいですよね。

河合:あとは動画スクールで動画クリエイターの友達ができたから、その子たちが活躍できる世界を作ろうと思ったことも理由の一つです。

山崎:それは一人で考えていたんですか? 誰かに相談した?

河合:自分で考えて、それを友達や母に伝えていました。事業開発についてあまり知らない相手に伝えて反応を見るんです。そこで伝わりすぎてしまうと、すでに世にある仕事だから、価格競争に入っちゃうなと考えていました

山崎:ビジネスセンスを感じます。起業すると、大企業と比べて単価を低くするパターンがありますが、質を高めつつ単価を上げることも大切ですよね。例えば商材の伝え方も、「マッサージ」とするより「スポーツマッサージ」とした方が専門性が出て単価を上げることができます。

起業後の不安との付き合い方

山崎:起業後、不安だったことはありますか?

河合:自分ならできるっていう根拠のない自信で動いていたけど、その自信も2カ月ぐらいで無くなりました。「これでご飯が食べられるかも」という良い兆しが見えるぐらいの段階になると、逆に至らない部分も分かってきて。「できる」って思えるのは、何も見えてないからなんですよね。ちょっと現実的なところが見えてくると、やっぱり不安な要素が出てきました。

山崎:支払いが増えてきたなとかね。対処法は何かありましたか?

河合:いろんな人に話してました。友達とか、属性関係なく。そうやって言語化していると、「ここが甘い」というのがわかってくるんです。周りに言って、結果にするしかない。そうやって自分を追い込んでいました。僕はそれを「呪い」と呼んでるんですけど。

自分を追い込む「呪い」をかける

山崎:河合さんって、ネイルしてるじゃないですか。何か理由があるんですか?

河合:単純に好きだからしてるんですけど、これも一つの「呪い」ですね。これって自分じゃ剥がしたりできなくて、ネイルし続けられるように「毎月1万円を払って、サロンでやってもらおう」と決めています。

山崎:取引先から目線は感じますか?

河合:ポジティブな声もありますし、どう思われているかわからない表情も見かけます。やんちゃな子がちょっとまじめな部分を持ってると、いい子だと思われるじゃないですか。それと同じ効果を狙ってるんです。人生の軸として「制限されず好きなことをして生きていきたい」と思っていて、これはネイルだけでなく会社運営の行動指針にもつながるところはありますね。

山崎:行動指針を忘れないための目印が自分の体にあるっていいですよね。

河合:呪いがないと駄目なんですよ。よく人から「優しいですね」って言われるんだけど、自分にも甘くしてしまう性格で。だからわざと呪いをかけて自分を追い込むんです。

山崎:経営者って、そういうスタイルが多いですよ。それに環境やつながりを意識している人が多い。河合さんは、人付き合いも大切にしてるそうですね。

河合:大学の知り合いや教授には、転職したタイミングで会いに行きました。なじみの飲食店にも、「遊びに来ました」と声をかけてます。相手も暇じゃないので、自分から会いに行くなら話す内容を持っていかないといけないじゃないですか。そういうプレッシャーをかけてます。

山崎:相手に報告ができるようにがんばるってことですよね。目上の人が相手だと、連絡するのに気を使ったりしませんか?

河合:ひるんでますよ。「いいよ」って返事が来たらほっとします。お誘いのLINEを打つのに1時間以上かけて、いつ送ったら邪魔じゃないかをよく考えてますね。

山崎:社長とか上に立つ人って、自分から社員をご飯を誘いにくいんですよね。1人だけ誘うと公平性が保てないから。だから自分が誘ってもらえると嬉しかったりするんですよ。

河合:営業のつもりはないんですけど、そこから動画制作につながることもありますね。相手の状況もわかっているので、話が生まれやすいです。

山崎:僕は上の人と食事をする機会があったら、1週間以内に相手の職場の社員にお土産を持っていくようにしています。代表が大事にしているのって、事業に従事する社員なんですよね。それをきっかけにいい関係になれたりするから、積極的に行った方がいいと思います。

フリートーク「付加価値はどこにある?」

イベント後半では、来場者からの質問に答える形でフリートークを行いました。

ー Q.規模の大きい制作会社とどう差別化していますか?

河合:大手企業は従業員を抱えてるからコストがかかる。その点、僕は都度チーム編成するから、かかるのは僕のコストだけ。スタートラインが安いんです。レベルもクリエイターによって金額を変動させているから、その違いを相手に伝えるようにしています。

ー Q.自分の立場の価値はどこにある?

河合:動画撮影って納品したらゴールなんです。せっかくの縁なのに、納品したら関係性が途絶える様子をいっぱいみてきました。そこで僕が入って、「次はどうしますか?」って尋ねるんです。クライアントが飲食店であれば、相手も一人でやっていることがあるから忙しい。でも、やりたい気持ちはあったりする。そういう代理店みたいなこともやっています。値段交渉も依頼を出す側からしてみてもクリエイターの間に人が介在する方が話しやすいみたいです。

ー Q.クライアントの期待と成果物へのギャップの対策は?

河合:ウェディングプランナー時代の経験が活きてますね。ウエディングって、花の位置が違うだけでクレームになるんです。だから、ふわっとした提案で場を盛り上げるんじゃなくて、細かく詰めていました。なんで赤色の花にしたいのか、エピソードを掘り下げる。そういう風に対応してきたことを相手が知っているだけで価値になって、多少成果物がずれても許してもらえるんです。動画の場合も、納品したもので修正希望が来たら、どう違うのかよくヒアリングします。そこから具体的な提案をして相手に納得してもらってから、クリエイターに流すようにしています。

ー Q.クライアントとクリエイターをつなぐ立場になった理由は?

河合:動画は僕も作れるけど、クリエイターはさらに動画愛がすごい。その気持ちには勝てないと思ったから、彼らにできないことで僕のスキルを活かしていきたいと思ったんですよね。クライアントの要望を言語化して、「2フレームずれているから、エフェクトいれて」などと橋渡しをしています。

ー Q.モチベーションの保ち方は?

河合:僕のモチベーションは、好きなクリエイターの動画を見続けたいという気持ちだけなんです。彼らが何かやりたいと思った時に相談してほしい。僕も一緒に悩むことで、その先を一緒に見ることができるじゃないですか。

ー Q.単価設定の考え方

河合:売り上げやコストなど、具体的に言語化していくと数字に落とし込めると思います。とにかく安売りしないこと。自分で動画を作れたらそれでいいかもしれないけど、クリエイターありきなので、彼らのマイナスにならないようにしています。単価を下げるのは簡単でも、上げるのは大変。下げていいことってあまりないですよ。

ー Q.クライアントに依存しない収入を作りたい。

河合:僕は「tape」という服のブランドを作りました。自社プロダクトをちゃんと持ってるって大事だと思うんです。

この服はクリエイターのユニフォームとして作っていて、動画を作る上で出てくるエラー画面をデザインとして取り込んでいるんです。身内で盛り上がれるブランドにして、価値を上げていければ。もしクリエイターが動画制作に飽きたら、「服を作ってみたら」と提案しようとも思っています。クリエイターに対して、動画以外の選択肢も準備しておきたいんですよね。そうすれば、ずっと一緒に働けるじゃないですか。

起業のつまずきポイントを想像して

河合さんの「呪い」という自分の追い込み方は、甘さを追い出すだけでなく、起業に対する熱意を思い出すきっかけにもなりそうです。生活に取り入れやすく感じた方もいるのではないでしょうか。 起業を経験した先駆者の生の声を聞くことで、つまずくポイントがリアルに想像できた今回のイベント。河合さんのように「起業の経験は仮に失敗しても、再就職の邪魔にならない」と思えば、思い切って飛び込むことができそうです。

当日のイベントの様子はこちらの動画からも視聴が可能です。
ぜひご覧ください。