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失敗にも種類がある? 起業準備で活かせる失敗の心得を学ぶ「起業の必須スキル★ 失敗との付き合い方・乗り越え方」

起業イベントレポート

「起業したいけど、もし失敗したら……」

新しい挑戦に不安を抱いている人はいませんか? もし、失敗が怖くて前に進めずにいるとしたら、失敗の捉え方と上手な付き合い方を知ることで起業への不安が解消できるかもしれません。

今回は、失敗との付き合い方・乗り越え方をテーマに活動する、一般社団法人ステップフォワードジャパンの代表理事の小俣勇祐さんをゲストに迎えてお話を伺います。
案内役・聞き役は、西大井創業支援センター長兼チーフコミュニティマネージャーの野田賀一です。

〈登壇者プロフィール〉
小俣 勇祐さん / 一般社団法人ステップフォワードジャパン
1990年生まれ。リユースPC国内トップシェア企業・リングロー株式会社取締役。
複業・フリーランス人材の支援を行う合同会社NIBASHO代表。
「失敗できる社会の醸成」を目指す一般社団法人ステップフォワードジャパン代表理事としても活動中。趣味は音楽(ロック)。ロックバンドのギターとして活動しつつ、インディーズバンドの紹介をするメディア「Simple Records」を運営中。 

【案内役】
野田 賀一
西大井創業支援センター長兼チーフコミュニティマネージャー

・人生にもビジネスにも、「失敗」なんてない?

小俣 勇祐さん(左)、野田 賀一(右)

野田:今回のゲストは、一般社団法人ステップフォワードジャパンの代表理事を務める小俣 勇祐さんです。昨年立ち上がったばかりの一般社団法人ですが、クラウドファンディングで202%を達成するなど、大変注目されていらっしゃいましたね。

小俣:ありがとうございます。ステップフォワードジャパンは“失敗できる社会の醸成”を目指し、2024年8月23日に設立しました。今年から「失敗の履歴書」というイベントを開催しており、経営者から政治家さんまで幅広い業界の方に登壇いただいて、失敗経験をオープンに語れる場を提供しています。

野田:たしかに「失敗経験」って話しづらいトピックですよね。起業家の場合、失敗を話すことがネガティブプロモーションになるのでは? と不安に思う方もいますし……。

小俣:まず「失敗」の響きと字面が恐ろしいですよね。「失って敗れる」って、ネガティブすぎますよ(笑)。ただし、失敗こそに価値があると僕たちは感じています。ビジネス、アート、スポーツなどどんな分野にもある失敗のナレッジを集めていき、失敗に寛容な社会や一歩踏み出す人を応援し合える社会の仕組みをつくっていきたいと考えています。

野田:これから起業する方の参考になるお話がたっぷり伺えそうです! 早速ですが、「失敗とは何か?」「なぜ失敗を恐れるのか?」という問いを掲げてみました。小俣さん、いかがでしょうか?

小俣:前提として「失敗なんてない」と考えています。

野田:どういうことですか?

小俣:振り返ってみれば僕にも「失敗したな〜」と思うことはあります。ただ、よくよく考えてみると、それは失敗ではないんですよね。そもそも失敗とは「望んでいたものがその通りにならないこと」「目標が満たされていない状態」と意味付けられるのですが、これは解釈であって、実態ではないんです。

野田:なるほど。

小俣:事実を解釈する時に、基準をどう置くかによって、失敗にも成功にもなりえるんです。例えば、メジャーリーグで1年間に2本のホームランを打ったとしましょう。大谷翔平さんの場合、失敗と言われてしまうかもしれません。しかし一般人の僕が打ったとしたら……これは成功どころの話ではないわけです。

野田:たしかにそうですね!

小俣:「なぜ失敗を恐れるのか?」という問いにつきまして、失敗には実態がないので、恐れの正体は別にあると思います。例えば、恥ずかしさだったり、他者からの評価を不安に感じることだったり。とくに、日本の場合は危機回避能力が高い人が多いので、起業などリスクが高いことに対して失敗への恐怖心が高いともいえます。

野田:江戸時代には、何かに失敗した人が切腹する場合もあったわけですからね。日本人の中で「失敗=罪」の文化が根付いているのかもしれません。現代でも、起業する人が周囲から「失敗するからやめたほうがいい」と言われるのはよくあることです。

小俣:失敗自体が怖いのではなく、失敗した後に迷惑がかかるとか恥ずかしさが残るといったことへの恐怖から、そう言わせてしまうのかもしれませんね。

失敗を因数分解すると、3種類に分けられる

野田:失敗からの学びや、次に活かすためのプロセスや思考法はありますか?

小俣:失敗にも種類があることを知っておいていただきたいな、と。ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンは著書『失敗できる組織(Right Kind of Wrong)』の中で、失敗には3つのタイプがあると書いています。


1)基本的失敗(Basic Failure ):経験不足などによるうっかりな失敗

2)複雑な失敗(Complex Failure):コントロールできない失敗

3)賢い失敗(Intelligent Failure):挑戦や実験の結果、生まれる失敗


小俣:まずは自分の失敗がどれに該当するのか、その正体を把握することが大切です。うっかりミスなら、トレーニングによって再発防止が可能です。私たちが提唱したいのは、「賢い失敗」と向き合うことであり、単純なミスを許す世の中にしようということではありません。

野田:まずは種類分けすることが大切なのですね。これから起業しようという人の中には、「ダメだ、失敗した」で手が止まってしまう人と、失敗を糧にどんどん進んでいける人がいるのですが、この違いはなんでしょうか?

小俣:心理学者のキャロル・S・ドゥエックは、『マインドセット「やればできる!」の研究』という本の中で 、失敗してしまった時に「自分には才能がない」と諦めてしまう「硬直マインドセット(固定型)」と、望んだ状態と現状とのギャップを認識できていて、難易度が高まるほどに燃えてくるような「しなやかマインドセット(成長型)」があると書いています。

手が止まってしまう人は「硬直マインドセット」で、前に進めるのが「しなやかマインドセット」なのかもしれませんね。

野田:起業は失敗の連続ですし、それをどう乗り越えるかというイベントが発生し続けますからね。僕はいろいろな立場の方から起業相談を受けるのですが、いちはやく、固定型的なサラリーマン脳から、成長型的な起業脳に転換していこうとお伝えしているんです。先ほど小俣さんが「失敗はない」とおっしゃっていたことが、理解できたような気がします。

小俣:僕は「失敗」という言葉自体がなくなるといいな、とも思います。「失敗できる社会の醸成」を掲げて運営しているので、言葉自体がなくなったら困ってしまいますが(笑)。

野田:なるほど(笑)。失敗を分析せずそのままにしておくことが、本当の意味での失敗かもしれませんね。

小俣:そうですね。しっかり因数分解してみることが大事。「失敗した」で思考が止まってしまう場合、本当はやりたくないか、諦める口実を探しているかだと思っています。

「できない」は「“まだ”できない」に変えられる

野田:いやぁ〜「失敗」についてだけで、こんなに語れるとは……驚きました。これまでもお話に出てきましたが、あらためて、賢い失敗の仕方についてお伺いしたいです。

小俣:目標やゴールを細かく分けて考えるのが良いでしょう。失敗は、望んでいたものが手に入らなかった時に感じるので、実現可能な目標をちょこちょこと達成していければいいんです。あとは、“The Power of Yet”の考え方を持っておくと良いですよ。

野田:詳しく教えてください。

小俣:これは、“まだ”という意味のyetをつけるだけで、「できない」から「“まだ”できない」に認識を変えられるという考え方なのですが……。

野田:おぉぉ! なんだか、やる気が湧いてきますね。

小俣:素質の問題ではなく、トレーニングによって向上できる可能性を感じられますよね。起業も同じではないでしょうか? 初めから全てを完璧にこなせる人はごく少数。「“まだ”できない」の精神を持っておくことが大切です。

野田:本当にその通りですね。ビジネスアイデアを思いついた瞬間に勢いで起業できてしまう人もいますが、「資格を取ってから」「もっと勉強してから」と入念に準備しようとしてしまう人のほうが多いので、まずは始めてみることが大事だと感じました。

小俣:PORT2401の利用者さん同士で、失敗談を語る場をつくるのもいいと思いますよ。

野田:面白そうですね。失敗の塩梅を知るためにも、ぜひやってみたいです。これからスタートラインに立つ方にとっても、先輩たちの失敗談を聞くことは大事な気がします。では最後に「未来へのエール」として、メッセージをいただけますか。

小俣:そうですね……。私はバンド活動もやっていて、THE BLUE HEARTSが大好きなんです。ボーカルの甲本ヒロトさんが素敵な言葉をたくさん残しているのですが、その中でも僕の中で響いているのが「バンドをやることが夢だったから、ずっと夢が叶っている」という言葉です。

野田:かっこいいですね〜。

小俣:めっちゃいいですよね。起業に置き換えたら、会社を運営しているだけで夢が叶っているし、従業員に給料を支払ってそれぞれが生活できているのもすごいこと。

これだけでも、社会的に意義があることをしているな、と。もし、失敗が怖いと感じているのなら、その正体は何か? どんな失敗なのか? 敵を知ることから始めてみてください。うまく付き合っていくことで、挑戦を続けていけると思います。

野田:ありがとうございます。すごく勇気をいただける言葉でした。ただし、メンタルが安定している時なら今の話を「本当にそうだな」と聞けますが、失敗が続いて落ち込んでしまうと、正常な思考が働かなくなるんですよね。

だからこそ、一人にならないことが重要だし、横のつながりを持つことで自分を取り戻すこともできるはず。ステップフォワードジャパンさんもその糸口になるようなイベントを開催しているんですよね?

小俣:そうです。ぜひご参加ください! 同じような興味・関心がある人とつながっていただくことで、挑戦に向かう力も養えると思います。


トークセッション後には交流会も行われ、大変盛り上がるイベントとなりました。起業における失敗との付き合い方、乗り越え方を楽しみながら学んでいただけたように感じます。小俣さんが掲げるように、失敗できる社会を醸成していきたいですね。

PORT2401は、「起業を0.5歩でも前に進めるためのキッカケの場」として今後もさまざまなイベントを行っていきます。ぜひお気軽にご参加ください。