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「行動することが成長につながる」――生き方に悩む学生に送る「学生起業のススメ」

起業イベントレポート

西大井創業支援センター(以下:当施設)では、「生き方の選択肢のひとつ」として「誰もが起業に挑戦できる施設」を目指しています。「自分らしい生き方」を求めて起業を選ぶ権利は、社会人経験に関わらず誰にでもあるはず。そのため、当施設では学生専用のプランを用意するなど、学生起業支援にも力を入れています。

今回は自分の将来や生き方にモヤモヤしている学生向けに、「起業」という選択肢のメリットを知ってもらうイベント「学生起業のススメ」を開催しました。ゲストスピーカーは、起業教育の通信制高校「起業家育成高等学院」を運営する株式会社Armory代表取締役CEO・福永祐作さん

実際に学生起業を経験した福永氏の実体験や、学生起業で学べることについて、福永さん・当施設インキュベーションマネージャーである朝比奈さんによるパネルディスカッションの内容をお届けします。

登壇者プロフィール

福永祐作(フクナガユウサク)/株式会社Armory(アーマリー)代表取締役CEO
1994年北海道生まれ。幼稚園からサッカーを始める。海外プロサッカーチームから声がかかるほどの実力を持つも、大学2年生のときに怪我で引退。2015年大学生向けコミュニティ事業で学生起業、2018年株式会社Armory設立。2020年には起業をカリキュラムに取り入れた通信制高校「起業家育成高等学院」を設立し、自分の将来に向き合い、ビジョンを実現するために起業に挑戦する学生を育てている。一般社団法人ユースキャリア機構理事、iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教員、超起業学校スタートアッププログラムメンターなど、起業と若者のキャリア構築を軸とした活動多数。

やりたいことの答えは、自分の中にしかない

最初に、福永さんから学生起業のススメと題して、自分の意思で人生をデザインすることの必要性や学生起業で得られる力についてお話いただきました。

1)15年続けたサッカーを辞めた経験を土台に、「若者が挑戦する文化をつくる」ミッションを見つけた

幼稚園からサッカーを始め、海外プロサッカーチームから声がかかるほど実力をあげ、練習に打ち込んでいた福永さん。当時、サッカー以外のことは何も知らなかったそうです。

しかし、大学2年生の時に怪我でサッカーができなくなってしまいます。「プロサッカー選手になる」という目標に向かってひたすら頑張ってきた福永さんは、大きな喪失感に苛まれました。

ところが、この怪我が自分を見つめ直すきっかけになったのです。サッカー選手になれたとしても、選手として活動できる期間は意外と短いため、その先の人生について考えておく必要があったこと、社会のことを何も知らなかったことに気がつきました。

そして、周りの反対を受けながらも、サッカーを引退。これからの人生で「自分がやりたいことは何か」を知るための活動を始めます。周りに相談できる大人がいなかったことや、様々な観点から社会のルールを知りたいと考えたことから、SNSを活用し、起業家や会社員を中心に2ヶ月で約50人に会いました。特に、起業家の「自分の信念にもとづいて挑戦している」姿勢に、漠然と憧れを抱いたそうです。

しかし、50人に会ったところで、福永さんが本当にやりたいことは見つかりませんでした。たくさんの人に会って気がついたことは、自分がやりたいことの答えは、自分の中にしかないということだったのです。

多くの人と話すことで様々な人生を知ることはできても、その人たちがやっていることが、自分がやりたいことかどうかは別問題です。親が言うから、先生が言うからという他人軸ではなく、「自分がどうしたいか」という「自分の軸を持つ」ことができないと、何人に話を聞いても、自分がやりたいことは見つかりません。

日々は流れ、福永さんは大学3年生に進級。就職活動の時期を迎えます。一度は周りの学生と同じように就活を行ったものの、その頃すでにやりたい事業アイディアが固まりつつあったこと、「人生をかけてなにかに挑戦していきたい」という思いを強く抱いていたことから、就活は止めて起業の道を選ぶことに。

「一度就職してから起業に挑戦する、会社員をしながら起業に挑戦するという選択肢もありますが、全力で起業に挑戦したかった。中途半端な気持ちだったら、他の人から応援もしてもらえないですよね」と福永さんは振り返ります。

事業が思うように軌道にのらなかったとしても、アルバイトで生活費を稼ぐことができる。起業に失敗したとしても、やりきった経験はいつか必ず役に立つ。そんなふうなポジティブな思考をもつようになったそうです。

起業に専念することを決意した福永さんが掲げたミッションは、「若者が挑戦する文化を創る」。15年続けたサッカーを辞めた後、社会について話を聞ける大人が周りにいなかったものの、自身の原体験から得た「やりたいことや将来の選択肢を考える機会が若いときから欲しかった」という気づきが、起業のミッションへと繋がりました。


P o i n t

▶︎ 自分が何をしたいのかという判断軸は、自分の中にしかない。
▶︎ 主語は「自分」。親、先生、友だち、学校、環境のせいにするのではなく、自分がどんな挑戦をするかは自分で決めること。後悔しない選択をしよう。

2)学生に伝えたいこと
誰にどんな価値を提供できるか考えるマインドセットと、自分から行動するアウトプットが必要

自身が運営する「起業家育成高等学院」で、日々起業を志す様々な学生と接する福永さん。学生起業家の多くが「自分はこれがやりたい」という自分目線で事業アイディアを考える傾向にあるといいます。

しかし、ビジネスとは「社会に対して価値を提供」し、その提供した価値に対してお金をいただくこと。「自分がやりたいこと」から考えるのではなく、「自分が他の人にどんな価値を提供できるのか」という視点からスタートすることが重要です。

また、起業のアイディアがあったとしてもそれを他人に言わず、自分のなかで考えるだけで終わっている学生はよく見かけるそうです。ビジネスの観点で考えると、どんなに素晴らしいアイディアをもとに事業を作っても、顧客が「いらない」と思うものはビジネスにはなりません

事業のアイディアの良し悪しを自分だけで判断するのではなく、まず他の人に向けて発信してみる。そこから得られたフィードバックをもとに改善する。そのフィードバックの量と質が大事なのです。

「自分からアクションを起こし、それに対するフィードバックをどれだけ多く得られるか」を意識し、まずは発信を心がけましょう。

福永さんは現在、起業家育成高等学院の他にも、iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教員や超起業学校スタートアッププログラムのメンターを務めています。これらは全て、福永さんからTwitterやFacebookのダイレクトメッセージを送ったことでご縁につながったもの。SNSでダイレクトメッセージを送ることは、誰にでも今日から始められることですので、積極的に活用しない手はありません。

このような、誰でもできるようなアクションでも、「明日やろう」「いつかやろう」ではなく、「今日やろう」と行動に移すことが起業への第一歩です。今日できることは何か考え、行動し、それを日々積み重ねることが、みなさんの起業を成功へと導いてくれるでしょう。


P o i n t

▶︎ 起業は「自分がやりたいこと」からではなく、「自分が誰にどんな価値を提供できるか」という視点からスタートするマインドセットが必要。
▶︎ アイディアは自分から他の人にどんどん発信してフィードバックをもらうことで、よりよいアイディアに発展する。
▶︎ 誰でもできるような行動を地道に積み重ねることで未来は変わる。「今日できる行動は何か」を考える。「明日」や「いつか」だと前には進まない。

学生起業で得られるチカラとは

第2部は、当施設のインキュベーションマネージャー・朝比奈氏と福永氏によるパネルディスカッションを行いました。

1)起業家になるには、自分にどのような経験や自信が必要?

朝比奈氏 講演ありがとうございました。ここで会場の皆さんに伺いたいのですが『福永さんすごい!』と思った方、手を挙げてください。

……全員、挙がりましたね(笑)。

私もお話を聞いていて、純粋に福永さんの行動力は素晴らしいと思いました。起業するには、福永さんのような行動力が必要だと思いますが、一方で実際に行動を起こすには、自信や原体験になるような経験が必要なのかな、と。福永さん、いかがですか?

福永氏 原体験と欲求という2つの側面があると思います。例えば「原体験がない」という方もいると思うのですが、原体験は誰にでも必ずあります

原体験を探るために必要なのは、まず自分の欲求を知ることです。自分の欲求は何か、その欲求がなぜ出てくるのか。これをどんどん掘り下げていきます。

例えば、起業をしたい理由が「金儲けがしたい」でも最初はいいんです。でも、そこからもう一歩掘り下げて、「なぜ」金儲けがしたいのかと考えを深めていくと、そう思うに至った原体験があるはずです。

朝比奈氏 原体験から出てくるストーリーはその人のオンリーワンの言葉ですから、共感を呼んで応援してもらいやすくなりますね。

福永さんの高校には、不登校だった生徒さんが入学されたそうですが、その経験が起業という方向に進んでいった背景には何があったんでしょうか?

福永氏 その生徒の場合は、不登校で苦しんでいた経験が誰かの役に立つのではないかというマインドセットが起こったのではないかと思います。そもそも不登校になった理由は、勉強をする意義が見いだせず、親や先生に聞いても明確な答えが得られなかったからだったそうです。

しかし、その生徒は起業家育成高等学院に来て、もっと社会のことや自分がやりたいことを考える機会が欲しかった、という気づきを得ました。社会やビジネスの仕組みを知ることで、学校で勉強する理由も見えてきたかもしれない。そうであれば、不登校だった期間の過ごし方が変わったのでは?と話していました。

そこで、その生徒は自分と同じように不登校になっている人に向けて、学校以外の場所、例えばフリースクールのような場をつくりたいという事業プランを作っています。

朝比奈氏 先ほどの講演でもお話いただきましたが、誰かの役に立てることがないかというマインドからスタートすることが、起業への第一歩ですね。

2)卒業生は、起業家育成高等学院での学びをどう生かしている?

朝比奈氏 起業家育成高等学院では卒業生も輩出されていますが、ここでの学びをその後の人生にどう生かしているのでしょうか?

福永氏 自分から行動して数多くのアウトプットをした経験が起業を通じて学べることであり、卒業生は自ら成長する力が備わっていると思います。起業家育成高等学院の授業でも、「授業でインプットしたところで1円にもならない。授業の外でどれだけ行動できるかどうか」と教えています。

例えば、デザインに興味がある生徒がいたので、「インターンをしたら良い」と教えました。しかし、その生徒が「インターン先はどうやって探せばいいのか」と聞いてくるので、「自分がよいと思ったデザイン会社を100社探して、連絡を取るように」課題を出しました。

実際にその生徒が100社探すと、インターンを募集していないとか、メールを送っても反応がないとか、いろいろと起こるわけです。しかし、その中の1社が、インターン生として受け入れてくれることになりました。

このように、学校でインターン先を探さなくても、生徒自身で探すことができますし、この自ら行動したプロセスにこそ学びがたくさんあるのです。まずは自分から動いて、数多くの打席に立ってアウトプットし、成長し続けること。これが起業を通して学べることでもあり、その後の人生でも生きることだと思います。

3)起業の魅力とは?ーー自ら行動し成果を出すこと、人との出会い

朝比奈氏 最後に、福永さんにとって起業の魅力はどこにあると思いますか?

福永氏 全て自分次第であることです。

自分の責任で決めたことで成果が出たり、今までなかったものができたりするのは、他に代えがたい喜びです。起業をしたからこそ共感や支援をしてくれる仲間にも出会うことができました。

自分の人生を動かすのは、親や先生ではない、自分自身だと視野が広がったのは、起業をしたことがきっかけだったと思います。

朝比奈氏 起業をすることで、他では会えない人と会える楽しみがあったり、自ら事業を進める苦労もありつつも、その成果もまた格別ですね。本日はご講演いただき、ありがとうございました!


P o i n t

▶︎ 起業の元となる原体験は必ずある。自分の欲求=したいことがなぜ生まれるのか掘り下げていくことで、その欲求が生まれるに至った原体験を見つけることができる
▶︎ 起業を通じて、自ら行動してアウトプットを積み重ね、改善していくという学びを得ることができ、自ら成長した経験をその後の人生でも生かせる。
▶︎ 起業の魅力は、自分で決定して実行したことで成果が出たときは楽しい。また、起業をしたからこそ出会える人たちがいる。

自分自身で人生を切り拓く力が身に付く、学生起業

社会人として働いた実績がなくても、特出したスキルを持っていなくても自身の原体験・行動力があれば挑戦できる学生起業。そこで身につけた力は、その先の人生を「自分らしく生きる」ために大いに役立ちます。

今後の人生にモヤモヤしている方、自分のやりたいこと・欲求ととことん向き合ってみたい方、学生のうちに起業に挑戦してみてはいかがでしょうか。

まずは今日、明日できる小さなことからトライしてみましょう。打席に立って挑戦した分だけ、あなたの未来はきっとあなたらしく輝くはずです。