PORT2401

2401起業media

イベントレポート:「ブランド設計の要は7つの要素」 起業初期に必要な自分ブランドの作り方と伝え方ワークショップ

品川区立西大井創業支援センター(PORT2401)は11月12日、100本以上の番組制作に携わってきた元NHKディレクターの三木佳世子さんを講師に迎え、「起業初期に必要な自分ブランドの作り方と伝え方ワークショップ」を行いました。

三木さんがこれまでたくさんの人を取材して培った、「相手に伝わる伝え方」と「応援したいと思ってもらえる自分ブランドの作り方」を学びます。講義では、学んだことを基に参加者が自身のサービスについてプレゼンする場面も。自分を客観視できるワークショップの様子をレポートします。

〈登壇者プロフィール〉

三木 佳世子氏 / 株式会社MiraiE 代表取締役 ブランドプロデューサー 慶應義塾大学総合政策学部卒業後、NHKに入局。ディレクターとして12年間で、100本以上の番組を制作。菊池寛賞・NHK会長賞を受賞し、幻冬舎から書籍出版も。2018年、サイボウズ株式会社へ転職し、企業の組織風土改革コンサルなどを行う。同時に、副(複)業で起業。その後PR会社の取締役を経験し、2023年に独立。企業・行政での研修事業、ブランドコンサルティング、自己PR力を身につけるスクール【CHANGE】主催


ブランドとは、差別化できる個性のこと

ブランドとは、牛に焼きごてで印を入れたところから始まった言葉で、言い換えれば、「明確に差別化できる個性のこと」と言えます。 ブランディングがよくできたサービスにはファンがつきます。圧倒的な独自化を狙い、ファンづくりを行うことは、サービスを続けるうえでとても大切です。

では、「テーマパークといえば?」「時計ブランドといえば?」と言われて思い浮かぶブランドを考えてみましょう。最初に思い浮かんだブランドを「第一想起」と言います。

起業してから人々の第一想起を取るまでには、長い道のりがあります。獲得するためには、口コミでさらにブランドイメージを広げていかなくてはなりません。このブランドイメージがどれだけ大事か。

現代では製品の品質が良いのは当たり前で、それだけでは選んでもらえない時代がやってきています。例えば、冷蔵庫はどの商品も基本的なスペックを兼ね備えているんですよね。購入者は口コミを参考にしたり、ブランドイメージや創業者のインタビューなどを読んだりして、共感で選ぶ時代になっています。 「品質の良さ+ブランドへの共感」で勝負しなければならない。だからこそ、これからはサービスや代表者自身のブランディングも重要なのです。創業したばかりで第一想起を取るのは大変ですが、「印象に残らない小さな会社」より「印象に残る小さな会社」をまずは目指しましょう。ブランドイメージの印象が残るか残らないかで、会社の規模が変わっていくと言っても過言ではありません


ブランディングの第一歩はファッションから

私はNHKディレクターとして、たくさんの取材をしてきました。その中で感じたのは、どんなに魅力的なサービスでも、その魅力をうまく伝えられる人とそうではない人がいることです。

職人気質な人は、「良いものを作っていれば伝わる」と言うけれど、良いものだからこそ、よりよく伝える工夫をしなければなりません。

どうすれば、相手に自分の良いところがうまく伝わるのか。第一歩は、発信者のファッションにあります。

「メラビアンの法則」をご存じですか? 誰かと話す時、本人は話す内容に集中するけれど、相手が受け取る情報は言語情報からが7%、聴覚情報からが38%、視覚情報からが55%の割合になるという法則です。つまり、視覚情報による影響が最も大きいんですよね。

人は、相手を見て3秒くらいで第一印象を決めています。ということは、投資に関するプレゼンで、相手が自分を一目見て「この人はないな」と思ったら、ビジネスチャンスがつぶれる可能性もあるわけです。それって、すごくもったいないですよね。

例えば、日本の伝統に関する事業をしているのに、代表が前衛的モダンファッションだったら少し違和感を感じるのではないでしょうか。自分と企業のブランドイメージを常に一致させる意識を持っていてほしいです。

では、ここでワークをしてみましょう。

【ワーク】 自分が起業する予定の会社にはどんなファッションがふさわしいか、4象限を使って考えみてください。4つの軸には、自分のブランドがより魅力的に伝わる形容詞を使いましょう。

<4象限で使う形容詞の例>

・プロ感↔親しみ

・きちんと↔抜け感

・明るい↔暗め

・男性的↔女性的

・高級感↔庶民感 など

例えば、私が運営する会社のMiraiEは、「共感で選ばれる」をコンセプトに、企業や個人の発信プロデュースをサポートしています。イメージは個性を重視しながら、しなやかに常識を超えていくこと。 だから私は、他とは違うワンショルダーのタンクトップの上にパンツスーツを着ています。正装すぎるリクルートスーツや、カジュアルすぎる姿では人前に立たない。そうやって、自分の中で狙いを持って服を選んでいます。

ワークシートができあがったら、狙いに合った服装が着用できているか、振り返ってみてください。もしできていなかったら、次回から意識して服を選ぶようにしてみましょう。


言語化してブランド設計してみよう

【ワーク】
続いては、自分のブランドを言語化して、設計してみましょう。まず自社サービスについて、次の7つの要素を考えていきます。

【ブランドに必要な7つの要素】

  1. どんなサービス? どんな会社?
  2. お客様が感じる変化(A→B 機能的価値)
  3. お客様が感じる変化(A→B 情緒的価値)
  4. 他社との違い(独自性)
  5. なぜ今?(社会性)
  6. やりたい理由(想い)
  7. 実績

1の「どんなサービス? どんな会社?」では、自社のサービスや会社自体について、一言で表現してみてください。「経営者向けのマナー教室」「お惣菜の宅配サービス」のように、専門用語を入れず、なるべく名詞で終わらせましょう。複数のサービスがある場合は、メインのサービスだけを捉えれば大丈夫です。

次に、2と3の「お客様が感じる変化」について。サービスはつまり、変化を提供しているんですよね。ですから、2の「機能的価値」については、サービスを利用することで起きる変化について取り上げます。例えば、PC教室だったら、PCを使ったことのない人がWordを使えるようになること。

3の「情緒的価値」は、サービスによって得られる感情面での幸せについて示します。PC教室の例で言えば、PCが使えなくて自信がなく、職場に通うのがおっくうだった人が、自信がわいて毎日幸せな気持ちで過ごせるようになる。
「機能的価値」と「情緒的価値」を分けて考えると、サービスの理解がより進むと思います。

4の「他社との違い」は、独自性のことです。お客様が自分のサービスを選ぶべき理由は何か。ここでは、従来のサービスで感じていた残念ポイント、つまり「もっとこうしたらいいのに」というポイントと、自社サービスの「ここがいい」と考えるポイントを、何点か挙げてみましょう。他社と自社のサービスが並んだ時に、お客様がどのような比較検討をするかを想像することが大事です。

例)「カフェを開きたい」

〇従来のサービスの残念ポイント
・缶コーヒーだと味気ない

〇自社サービスの「ここがいい」ポイント
・豆から挽いたおいしいコーヒーが味わえる

5の「なぜ今なのか」は、メディアに取り上げられた時のことを想像してみてください。社会の状況や課題に対して、自社サービスにどんな価値があるのか。今の日本で生きているターゲット層がどんなことで悩んでいるのか。世の中の目線を捉えることが大切です。

6の「やりたい理由」は、なぜ起業したのか、思いを伝えてください。これが伝えられないと、「そのビジネスは、あなたがやらなくてもいいよね」と思われてしまいます。

「なぜ自分がやりたいのか」を突き詰める大切さに気づいた原体験があります。私が高校生の時の話ですが、クラスメートのA君は「自分は勉強ができるから、偏差値の高い学部=医学部に行きたい」、B君は「障害がある姉のために、バリアフリーの家を設計したい。だから建築と社会問題を学べる学部へ行きたい」と語っていたんです。学部の志望理由としての説得力はどちらにあるでしょう。きっとB君ではないでしょうか。

経験から裏打ちされた言葉が人の心を打ち、応援したくなるんです。 最後に、7の「実績」では、仕事や当事者としての苦労を実績として言語化していきましょう。なるべく固有名詞や数字を入れることで、自己評価ではなく誰が見てもわかりやすい実績になります。

7つの要素がそろったら、1つの文章にまとめましょう。次の定型文の中に考えた内容を入れることで、文章ができあがります。

『自社は「1.どんなサービス? どんな会社?」でお客様に「2.お客様が感じる変化(A→B 機能的価値)」「3.お客様が感じる変化(A→B 情緒的価値)」を届けることができる。なぜなら「5.なぜ今?(社会性)」の社会背景の中「6.やりたい理由(想い)」があり、「4.他社との違い(独自性)」や「7.実績」があるから』

私の場合は、次のような文章になります。

なぜ立ち上げたのかといった思いだけでなく、具体的な実績や数字も入ることで、「この人にお願いしたらよさそう」という説得力が増したはずです。


プレゼンを動画撮影して客観視しよう

では、自分で考えた内容を、皆の前で発表してみましょう。プレゼンの様子はご自身のスマホで撮影して、終了後にお戻しします。自分がどのような表情や話し方をしているか、参考にしてみてください。

ここでは、参加者の発表を2つ取り上げます。

参加者A

「“10分間カフェ”の経営を考えています。サービス内容は、リラクゼーションできる時間を10分間提供すること。忙しい中、缶コーヒーで休憩するのではなく、おいしいコーヒーを片手に、ちゃんと場所を確保してリセットすることは、新しいアイデアが生まれる余裕を作ります。
 現代は忙しく、ストレス社会ですよね。その中で10分間と決めた時間を精いっぱいリフレッシュにあて、次のアクションにつなげることは大切です。
 私は海外で3年半過ごしたことがあり、『海外の人は休憩の仕方がうまい』と感じましたし、実際、子連れで買い物に出た時なども、ママたちの買い物を待つ10分の間に休憩したいって思うんですよね。でも、ただ立っているだけだと寂しい。きちんとした空間で、10分間の休憩時間を提供することで、新しいサービスが生まれるんじゃないかと思います」

参加者B

「私は薬膳心理学のサービスを提供していきたいと思っています。
 薬膳心理学とは、薬膳と心理学を組み合わせて心と体に同時にアプローチし、健康を目指すサポートのこと。自分の不調の原因に気づいて心と向き合うことで、自信のなさや、くよくよする感情もコントロールできるようになります。
 心と体はつながっているんですが、片方だけがフォーカスされることが多いですよね。私自身、急に体に力が入らなくなったことがあるんです。なぜなんだろうと自己嫌悪に陥りました。そこで出合ったのが薬膳心理学です。
 これまで社会福祉士として人の悩みを聞いてきましたから、今後は薬膳心理学を使って、人の悩みを引き出すだけでなく、健康的な体に導くサポートをしていきたいと思っています」

 皆さん、プレゼンの様子がとてもよかったです。7つの要素からサービスについて考えてみることで、言語化されていなかった部分がより具体的になったのではないでしょうか。
 人生は毎日がオーディションの連続。ちょっとした出会いでも、仕事の縁につながることがあります。縁を引き寄せるためにもブランディングをしっかりしておいて、自社サービスをよりよく説明できるよう準備しておきましょう。


経営者自身とサービス内容、2つの方向からブランディング

経営者は、そのブランドやサービスを一番表現できる人です。今回はお伝えできませんでしたが、ファッション以外にも、プレゼンの際の発声や姿勢などもブランディングの1つとしてこだわってみてください。もちろんサービスや商品の内容についても、他社との違いやなぜ自分がやるべきなのかなど、7つの要素の言語化を通じて独自性を深めていきましょう。