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イベントレポート:書き換えられた起業の常識!なぜあなたの「起業したい」は実現しないのか?“失敗のない”キャリアモデル型 起業とは?

起業イベントレポート

食べていくため」「会社を辞めるため」、そのような理由だけで組み立てた起業プランは、どこかで息切れしがちです。

これからの時代に必要なのは、「食べていくための起業」ではなく「生きていくための起業」ではないでしょうか。今回は「キャリアモデル型」の起業について、一般社団法人ソーシャル・デザイン代表理事を務める長沼博之さんとともに考えます。

「起業に失敗したらどうしよう」「自分には起業アイデアがない」と悩んでいる方にとって、不安を整理するヒントになれば幸いです。

案内役・聞き役は、西大井創業支援センター長兼チーフコミュニティマネージャーの野田賀一が務めます。

〈登壇者プロフィール〉
長沼博之(ながぬま ひろゆき)さん
一般社団法人ソーシャル・デザイン 代表理事/キャリアモデル開発センター
未来の働き方と次世代の起業モデルを研究し、自分だけのオリジナルなキャリアモデルから生まれる「キャリアモデル型 起業」を提唱。企業や自治体と協働し、一人ひとりの潜在能力を事業や地域の力へ変える支援に取り組んでいる。著書に『ワーク・デザイン──これからの〈働き方の設計図〉』『100年働く仕事の哲学』『ビジネスモデル2025』がある。

【案内役】
野田 賀一
西大井創業支援センター長兼チーフコミュニティマネージャー

人生100年時代では、オーナーシップを持って自身のキャリアを構築する

長沼博之さん

長沼:私は一般社団法人ソーシャル・デザインで、自分だけのオリジナルなキャリアモデルから生まれる「キャリアモデル型 起業」を提唱しています。

昨今は、東京都が職員向けに週休3日制を導入したり、高知県の企業が「夢応援制度」として週休3日を導入する事例が出てきたりしています。

また、就労人口にも大きな変化があり、60代の転職が増加。定年なき時代にどう働いていくか? 会社の中でキャリアを築いていくのではなく、誰もがオーナーシップをもって自身のキャリアを構築する時代へと突入していると言えるでしょう。

長沼:「キャリアモデル型 起業」は、自分の生活の中に起業が入ってくることがポイントです。これまでの起業は、急成長を求められ巨大市場へと参入していく「スタートアップ型」、自分が生活できる範囲でゆるやかに起業する「自営業・フリーランス型」のどちらかで考えられてきました。人生100年時代では、この2つに「キャリアモデル型」が加わると考えています。

長沼:「キャリアモデル型 起業」とは、10〜30年という長い時間軸で、働きがいを高めていく起業のかたちです。すでに自分の中にある複数の役割、経験や興味など「キャリアパーツ」と呼ばれる自分の潜在能力を丁寧に見える化し、組み合わせて育てていくことで新たなシナジーを生み出すことが、スタートアップ型や自営業型と異なる点と言えるでしょう。

例えば、文学フリマへの出店やインディーズゲームの開発など、本業とは別に自分の趣味を活かした活動で新たな価値を生み出していくこともキャリアモデル型です。利益を出すための起業では、何をどう売って利益を得るかを考えますが、キャリアモデル型は自身の「生きがい」を基軸に利益よりも人生の幸福に重点が置かれます。

そのため、本業をしながら、副業をしながら、キャリアモデルを育てていくことができる。これまでの起業セオリーのような大きなキャリアチェンジの必要がありません。

【クロストーク】なぜ「起業」は苦しいのか?

ここからは、西大井創業支援センター長兼チーフコミュニティマネージャーの野田賀一を案内役に迎え、トークテーマに沿ったクロストークを行います。

野田賀一(右)

野田:最初のテーマは、「なぜ「起業」は、あなたを苦しくしてしまうのか?」です。当施設は起業支援を行っているのですが、自分らしさが削られていってしまう人、「私には無理だ」と諦めてしまう人を見てきました。長沼さんとは以前からこのテーマを熱く語り合っている仲なのですが、改めて教えていただけますか?

長沼:「何のために起業するのか?」と自分自身に問うてみて、それがご自身の中のディープミッション(人生における使命感)につながってこないと、どうしても生活費を稼ぐことだけに気を取られて苦しくなっていくからではないでしょうか。

起業ってキラキラしているように見えるので、蓋を開けた時の地味さに心が折れてしまう人も多いんですよね。「何のために起業するのか?」を自分に問うこと。これが重要なポイントだと感じています。

野田:「起業しかない」と視野が狭くなってしまう人もいますよね。何かをやりたい思いは、本当に起業でしか叶えられないの? と。「キャリアモデル型 起業」でサポートできることも多いと感じているんです。

長沼:野田さんが日々仰っているように、小さな一歩、0.5歩チャレンジしてみようということが大切だと私も感じています。小さくチャレンジできるのが、「キャリアモデル型 起業」のメリットです。

野田:続いては、「ビジネスアイデア時代からキャリアモデル時代に移行する意味」について考えていきましょう。自分の中に「これが好き」がないと続かない時代と言えるのでしょうか?

長沼:現代は情報過多で変化が大きく、意思決定が難しい時代です。その中で、自分は何をやるべきか? という使命感がないと簡単にブレてしまう。私たちはキャリアモデル開発の際、専用のAIと対話をしながら、キャリアモデル開発士とともに作成していきます。超情報化社会であるからこそ、根底を定め、軸を明確にしていくことがこれからの時代に必要だと感じています。

野田:私の知り合いに、サメのことが大好きなシャークジャーナリストさんがいるのですが、この方は「儲けよう」と思ってサメの専門家になったとは思えないんですよね。好きな活動をしていくうちに、つながりが広がってビジネスになった。自分の中でシナジーが生まれてくることが、「生きていくための起業」や「キャリアモデル型 起業」なのかな? と感じています。

【質疑応答】生活の中に起業のアイデアが眠っている?

ここからは、会場やオンラインの参加者さんからいただいた質問に回答していきましょう。

参加者A:「キャリアモデル型 起業」の面白さを知ることができました。ただ、その一歩を始める場所がありません。どこで、どうやって作っていけばよいのでしょうか?

長沼:これは野田さんの得意分野なのでは……?

野田:この施設の宣伝になってしまいますが(笑)、この場所を活用してください! 少人数で会議室を借りてセミナーをやるなら300円から利用することができます。いきなり集客するのも難しいと思うので、まずは知り合いに来てもらって経験を重ねていく。

もしかしたら、予定していた事業Aよりも事業Bに展開していくほうがいいなんてことも見つかるかもしれません。まずは行動してみましょう。

参加者B:「小さく始める」という言葉にビビッと来たのですが、自分の強みを見つけていく過程で、「こんなことでいいのか?」とか「これで本当にいいのか?」という不安がわいてくる気がしています。どうしたら、ディープミッションに自信をもてるようになりますか?

長沼:感動的な質問をありがとうございます。キャリア支援の場合、自己理解は深まるんですよね。ただ、自己確信まではなかなか至らない。自分のキャラクターや個性は理解できても、「これで行ける」と確信するまでには壁があると感じています。

キャリアモデル開発では、AIをフル活用して潜在的なポテンシャルに働きかけ、シミュレーションもするので、自己確信までつながっていきます。また、AIだけではなく、キャリア開発士も同席するので、人間とAIの両方からサポートが受けられます。SaaSではなく、HaaS(Human as a Service)的に活用していくのがぴったりなんですよ。

野田:僕の実体験を交えて話すと、脱サラした後に「やりたいことってなんだろう?」って思ってしまったんですよね。会社の肩書きがなくなり、自分が主人公になると、途端に自信がなくなってしまいました。

どう確信していったかというと、感謝や対価の積み重ねしかない。AIはいい言葉をくれるので、新しい気づきを与えてくれる相棒として活用するのがいいと思います。とにかくアクションしていくことが、自信につながっていきますよ!

参加者C:今の活動を起業につなげたいのですが、どう進めていいかがわかりません。

長沼:きっとキャリアパーツはそろっている方なんだと思うんです。ただ、競合がたくさんいる中で、自分はそれをどう広く社会で活かしていくべきかが分からなくて悩んでいるのかな? と。

そういう時は、すぐに起業しないことですね。マネタイズしていくまでに、むしろ時間をかけてみてください。今の活動を30年続けていくと、オリジナリティが増していくかもしれない。戦略的に時間軸を伸ばしていくのがよいと思います。

参加者D:起業する上での心構えが知りたいです。必要な準備やこれから起こるリスクにどのように備えたらいいか教えてください。

長沼:今回のテーマは「失敗しないキャリアモデル」ですが、「何が失敗やリスクなのか」 を一度整理してみましょう。私が考える失敗は「チャレンジしないこと」。キャリアモデル型は、状況に応じて方向転換しながら続けやすい考え方です。長期的に取り組むプロジェクトとして捉えれば、リスク回避はしやすいと思います。

野田:起業って大抵がうまくいかないんですよ。起業した人全員が成功していたら、日本中が億万長者だらけです。

うまくいかなかった時に、失敗したと捉えるか、成功への途中と捉えるかの問題だけだと感じています。思い通りにならないことへの心構えを持つことが大事なのかもしれませんね。

参加者E:いつか起業したいという思いはあります。アイデアがないまま起業の準備をしてもいいのでしょうか?

長沼:生活を見つめ直してみるのはどうでしょうか? 普段やっていることがいかにオリジナリティがあることなのか、多くの人は気づいていません。

野田:本当にその通りだと思います! 誰かに「すごいね」とか「そんなことできるの?」と驚かれたことがきっかけで、キャリアパーツに気づく人もいますからね。

長沼:起業は生活の延長と考えていれば、飛び抜けたアイデアはなくても良いかもしれませんよね。自然と起業できる状態が望ましいのかな? と思います。

参加者F:創業の準備はどこから手をつけたらよいのでしょうか?

野田:「ニーズがあるのか」を確認することです。私たちは、ユーザーヒアリングをおすすめしています。そして、実際に聞いてみたら「ターゲットとなるユーザーはいませんでした」ということも。ユーザーの声に耳を傾けるのが始まりになると思います。

長沼:生活の中に起業があると話しましたが、自分と同じ生活圏にいる家族や友人、同僚に話を聞いてみるのも大切です。無理なくできることから始めてみてください。

質問:以前、会社員になることに抵抗があると話す学生に出会いました。10〜20代のキャリア感が変わってきているように感じます。今後、どのようなことを意識したらよいのでしょうか?

長沼:キャリアモデル型のOSがあることを知ってください。今日お話ししたような世界観があることを知ってほしい。以前は、就職したら人生の全てを会社に捧げると考えている人がいましたが、現代は好きなことを諦めなくてもいい時代です。

他人にとってはなんでもないことも、自分にとっては武器になるキャリアパーツを持っているかもしれません。個性や経験をどう活かすか? その知恵が大事だと思います。

会場では活発に意見が交わされ、自身のキャリアを見直し、自己確信の大切さを知っていただくことができました。あと一歩踏み込みたい方は、毎月開催されている「インキュベーションマネージャー個別相談会」にもぜひご参加ください。

PORT2401は「起業を0.5歩でも前に進めるためのキッカケの場」として、今後もさまざまなイベントを行っていきます。