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「歯科学生だからこそ、0→1でビジネスを生み出したい」学生起業家2人の挑戦
2022年2月1日にオープンしたばかりの西大井創業支援センター(愛称:PORT2401)。オープンと同時に、第1期会員として12名の月額会員さんが入居しました。
年齢・事業内容共に多様な皆さんですが、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。
記念すべき第1回会員インタビューとして、共同経営という形で起業に挑戦中の学生起業家、松村勇佑さんと野上知暉さんにお話を伺いました。
学生起業ならではのメリット・デメリットもお聞きしたので、学生起業を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
歯科学生が考える、歯科業界の課題解決サービス
お二人が設立予定の会社ロゴ。読みは、ディーファスト
―― 初めに、お二人はどのような事業に挑戦されているのでしょうか?
松村さん 現在は、歯科医師向けの歯科医療機器特化型検索エンジンを構築中です。
野上さん 自分たちが、歯科になるための大学に通う4年生なので、その知見を活かしています。
松村さん 日本では10万人いる歯科医師に対して、歯科医院は7万件あると言われており、およそ7割の歯科医師が開業医として1人で歯科医院を経営しています。日常の診療で用いる機器や材料に関しての情報を入手し、場合によっては購入までする必要がありますが、現状では情報が分散しています。
一方で、メーカーも様々な手段を用いて歯科医師にアプローチしようとしていますが、ディーラー経由のオフラインチャネルがメインとなっています。
そこで、私たちのサービスを介して両者をマッチングし、両者の負担軽減及び業界の活性化に寄与したいと考えています。
歯科学生だからこそ興味を持った、0→1でビジネスを生み出すということ
(左)野上知暉さん、(右)松村勇佑さん
―― 歯科学生という忙しい環境で、なぜ、お二人は起業しようと思ったのですか?
松村さん 歯科の現場って、根拠に基づいてすでに決められていることを学ぶというか…医療なので“0から1を生み出す”みたいなことがほとんどないんです。
歯医者の勉強を続ける一方で、「自分で0から1を生み出すようなことに挑戦してみたい」と思い、大学3年(2020年)の夏に高校時代の友人3人でビジネスコンテストに出たことが始まりでした。
また、最近「医師×起業家」という方が増えてきたので、「歯医者×起業家」もこれからもっと増えていくと考えています。
―― 医療を学んでいるからこそ、0→1に挑戦してみたいという想いが生まれたのですね。
その当時一緒にビジネスコンテストに出たのが、野上さんだったのですか?
野上さん いえ、その時は僕は関わっていなくて。
ただ、話は聞いていて、面白そうだなと思っていました。
松村さん 初めてのビジネスコンテストの結果は思わしくなくて…。コンテスト後にそのメンバーは解散してしまったのですが、自分の「起業したい」という想いは続いていました。
そこで、「一緒に起業しないか」と野上くんを誘い、2人で動き出したんです。
――現在の事業内容は、いつ頃から考えていたのですか?
松村さん 本格的に野上くんと起業準備を始めたのが2021年の春頃で、実は歯科医療を軸に、当初は別の事業を考えていました。
具体的には、飲み込みが弱い高齢者の方に向けた、嚥下食(えんげしょく)の飲食サービスや、医療従事者の方が自身の経歴をまとめるWEBサービスなどですね。
野上さん しかし、飲食など自分たちの専門外の要素が大きすぎるとうまく進まなかったり、医療従事者の傾向とサービス内容がズレていたりしていたんです。そこで、何度か試しては事業内容を変え、昨年の10〜11月くらいに現在の形に辿り着きました。
失敗を恐れずに挑戦しやすい、学生起業
――紆余曲折があったのですね。
学生という立場で起業する、メリットは何だと思いますか?
父も歯医者で、事業内容にアドバイスをしてくれると言う、松村さん
松村さん 学生起業家のメリットは、生活の心配をしなくて良いので、ある程度リスクを取りやすいということですね。
ご飯が食べられなくなることはないので、良い意味で失敗しやすい環境だと言えます。自分の生活も担保しないといけないとなると、もっと大変なんだろうなと。
野上さん 視野が広がることもありますね。
エンジニアさんとか、デザイナーさんとか、大学では出会えない方々と知り合ったり。
松村さん 知識も広がりましたね。昨日2人で社会保険について話し合ったんですが、普通に大学に通っていただけだったら、社会保険の話なんてする機会なかったと思います(笑)
あと、「一生懸命がんばれることができる」点でしょうか。私は中高6年間バスケットをやっていたのですが、大学では学業以外にそこまで打ち込めるものがなかったんです。自分の中の軸というか、そういうものができたのはうれしいですね。
――反対に、学生という立場がデメリットだと感じることはありますか?
松村さん デメリットとまではいかないですが、やはり経験が浅いことが事業を進める上で足枷となることはあります。
野上さん 現在も冒頭の事業をローンチするためにサイト構築を行っていますが、なかなか大変ですね。
そういった意味では、こういった施設で他の会員の方やインキュベーションマネージャーと話せるのはとても有り難いです。起業家として先輩だったり、社会人として専門スキルを持ったりされている方も多いので、とても勉強になっています。
なぜ、西大井創業支援センターに?
――現在の事業を進める上で、なぜ当施設に入居しようと考えたのでしょうか?
松村さん 昨年の9月から参加している、五反田バレーアクセラレーションプログラム(今期は2022年3月終了予定)がきっかけです。
月に1回くらいのペースで、会社設立に役立つセミナーを受けたり、品川区内の先輩起業家の方の登壇を聞いたりして、本当に勉強になりましたね。
それが自分たちの大きな転機になったというか、そこから事業がグッと進んだので、品川区が行う創業支援への信頼感があったといいますか。
学業と起業の両立を目指す、野上さん
野上さん そんな中で、品川区の職員の方から西大井創業支援センターに関する話を聞きました。
やはり最初から自分たちでオフィスを借りるのは大変だし、こういった施設はありがたいなと。リニューアルオープンと同時に入居できるということで、 まっさらな施設も楽しみでした。
――実際に入居してみてどうですか?
松村さん 五反田バレーアクセラレーションプログラムもそうだったのですが、西大井創業支援センターでも他の会員さんとの出会いにとても刺激を受け、勉強になっています。エンジニアさんや英語に詳しい方など、さまざまな分野で活動する方と気軽に話ができるのはとてもありがたいですね。
また、毎月一度の、インキュベーションマネージャーとの1on1で、事業の相談ができるのも大きなメリットです。
野上さん まだ入居したばかりですが、会員同士の交流会に積極的に参加していきたいですね。皆さんの前で、ピッチの練習もしたいです!
起業アイディアがある学生は、まずは周りの友人に話してみよう
――オフィスという環境面だけでなく、会員さんや運営メンバーとの交流が事業を進める上で非常にプラスになっているようですね。
今後の事業展開は、どのようにお考えですか?
松村さん 直近では、現在構築中の歯科医師向けの歯科医療機器特化型検索エンジンをローンチさせることが目標です。
また、長期的には歯科医師という立場を活かした、to C向けの歯科サービスなども展開していきたいですね。
野上さん やはり、歯科は皆さんの健康に大きく影響を与える分野ですので、広く社会に貢献していきたいと考えています。
――大学卒業後も、会社を続ける予定ですか?
松村さん はい。そのためにも、学生のうちにできるだけ会社を安定した状態にしたいですね。収益面はもちろん、採用面やバックオフィス面など、広い意味で。
学業もあるので思うように進まない時もありますが、学生だからこそ失敗を恐れずに進められるという利点を活かし、しばらくは両立をがんばります。
――起業を検討している学生の方へ、メッセージはありますか?
松村さん まだまだ自分たちが何かを言える立場ではないですが、何かアイディアを持っているのであれば、ビジネスコンテストに出てみるのはすごく良いと思います。自分も最初の1歩はそうだったので。
野上さん あとは、周りの友人にアイディアを話してみるのも良いですね。意外と共感してくれる人もいます。自分も、松村くんの話を聞いて一緒に起業することを決めましたから。
――1人ではなく、2人で起業に挑戦して良かったと思いますか?
松村さん はい、本当にそう思いますね。1人だったら絶対にここまで進まなかったと思います。そういった意味では、周りに友人がたくさんいる学生という環境は、一緒に挑戦してくれる仲間を見つけやすいのかもしれませんね。
学生という強みを存分に活かし、起業準備を進める松村さんと野上さん。同じ分野を学ぶ友人同士だからこそ、共感し合える部分、共に頑張れる部分も多いようです。起業のアイディアがある方は、周りの人に話してみるところから始めてみましょう。
起業を進める上で知識や経験が乏しいということが足枷となってしまう場合は、当施設を始めとする創業支援施設やプログラムを活用してみるのもひとつの手です。
そこでの学びや出会いが、きっとあなたの起業を加速させてくれることでしょう。