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司法書士に聞く「定款」作成時の8つのポイント

起業イベントレポート

会社設立に向けて準備中の皆さん、法人登記に必要な定款について、知識のインプットはお済みですか?定款を一度提出してしまうと、変更の際に再び手続きや費用が必要となるため、押さえておくべきポイントをしっかりと把握した上で提出するのがおすすめです。

西大井創業支援センター(以下:当施設)では2023年1月24日、当施設連携アドバイザーの阿部 舜氏をゲストに迎え【クイズ形式で理解を深めて起業しよう!後から後悔しないための定款作成のコツ】を開催しました。

イベント内容をもとに、定款作成のコツや抑えておくべきポイントをお伝えします。

登壇者プロフィール

阿部 舜 / 司法書士事務所みらいGrowth 代表司法書士
学生時代に本を見ながら起業し、手続き面での苦労を味わった苦い経験から、司法書士を志す。ベンチャーから上場企業まで、年間約300社の登記・企業法務を手掛けながら、起業後のサポートも行っている。「皆様の無駄な費用を抑え、安全かつスピーディなスタートアップを支援しております。起業したい方・起業を決意した方でお困りの方は、お気軽にお声掛けください。」

イベント特別定款サンプルを元に、気をつけるべき点を考えよう

法人登記の際、下記のような流れに沿って、行うべき手続きがたくさんあります。

今回の主題は、会社設立の最初の手続きとなる定款作成です。イベントでは、阿部氏に用意いただいたケーススタディ(事例)で、定款に関する具体的な知識を深めていきました。

上記のような背景で株式会社を設立することになった場合、どのような定款を作成する必要があるでしょうか。

定款の第1章から見てみましょう。下記は、今回のイベントのために阿部氏が用意してくれた、定款サンプルです。修正すべき箇所はないかをチェックしてみましょう。

POINT 1.「目的」には将来的に予定している事業も記載しよう

今回のケースでは、将来的に起業家向けの居酒屋やオフィス賃貸の仲介業も視野に入れているものの、定款には最初に始めるIT事業についてしか記載されていません。この定款に記載されていない事業を行った場合、将来的にはどうなってしまうのでしょうか。

定款に記載されていない事業を行った場合、第1に株主から指摘を受ける可能性があります。しかしスタートアップは株主=代表取締役や役員であることが多いため、定款と異なる事業内容を展開しても問題になることはほとんどありません。

第2に必要な手続きの際に士業の方から指摘を受ける可能性があります。例えば、税理士に「定款にない事業内容のため経費として計上できない」と言われたり、飲食店営業や建設業、中古販売など許認可が必要となる事業を展開する場合は、行政書士から「許認可がおりない」を言われてしまったりする可能性があります。また、不動産業など免許取得が必要となる事業でも、認可に関して何らかの影響を受けるかもしれません。

定款の事業内容は、今すぐ始める事業だけでなく将来的に始める予定の事業を記載しても問題ありません。会社の未来を見据えた上で、網羅的に事業内容を記載しましょう。

POINT 2.「本店所在地」は市町村(区)までの記載でOK

続いて、第3条の「本店所在地」を見てみましょう。定款の書き方は法律で決まっており、所在地の部分は市町村(区)までで問題ないとされています。番地まで記載してしまうと、市町村(区)内で移転を行なった場合でも定款の変更が必要となり、株主総会特別決議や書類変更の手続きで費用が発生してしまいます。本店所在地は市町村(区)までの記載としておきましょう。

また、最近ではバーチャルオフィスを選ぶ方が増えています。バーチャルオフィスの難点として、銀行口座の開設がしづらいことが挙げられます。現在、マネーロンダリングを防ぐために「オフィスの実態がない」と銀行の審査が厳しくなる場合があります。これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、最初のオフィス(本店所在地)を決定しましょう。

POINT 3.電子は意外とお得じゃない場合も?「公告方法」は官報がおすすめ

近年「費用が抑えられるため電子公告が良い」という情報も多くありますが、電子公告は法人設立時までに会社HPなどのURLが必要であり、現実的に難しい場合もあります。また、決算公告の際、官報公告の場合一部を記載すれば良い(※)のに対し、電子公告は全てを記載しなければなりません

※官報公告では紙面に限界があるため要旨だけで良いとされています。

さらに、合併や資本金減少などで「公告をしたことを証する書面」(法定公告)が必要となった際、官報では決算公告の紙面がそれにあたりますが、電子公告の場合は調査会社に依頼する必要があり、別途費用が発生します。「お得だよ」と言われて電子公告にしたものの、意外と費用がかかってしまうケースも少なくありません。公告方法は可能な限り、官報にするのがおすすめです。

POINT 4.発行可能株式総数は、多めに設定しておこう

次に、定款の第2章を見ていきましょう。

ここで注目すべきは、第5条の発行可能株式総数です。野田氏と朝比奈氏が50株ずつ出資して設立する場合、これ以上出資を受けることができなくなってしまいます。また、そうでなくとも100株しかない場合、「0.1%の株式譲渡」などの細かいやり取りが難しいでしょう。

昔は、発行可能株式総数は設立時に発行した株式数の4倍までというルールがありましたが現在は制限がないため、1万株や1億株など多めに設定しておくことがおすすめです。

POINT 5.取締役の任期は短すぎても長すぎてもNG

少し飛んで、第4章の「取締役及び代表取締役」を見てみます。修正すべき点はありましたか?

答えは、第24条の「取締役の任期」(※)です。任期を過ぎると、同じ人が再任する場合でも都度登記費用が発生するため、任期を長く設定することでコストを下げることはできます。一方、役員を辞めさせたい時に辞めさせることができなくなってしまいます

※任期を1年に設定すると、1年ごとに登記費用がかかります。また、辞任する場合は任期内でも辞めることが可能です。

途中で解任することも可能ですが、書類上残っていた年数分の役員報酬を請求される訴訟リスクがあります。誰かと会社を始める際、立ち上げ時はどうしても気持ちが盛り上がって相手を全面的に信用してしまいがちですが、もしもの時のためにも、最初から任期を長く設定することは避けましょう。

POINT 6.消費税免税期間や決算の税理士依頼費を考慮し、事業年度を設定しよう

第5章は、「計算」です。

第27条に、3月末日を期末とすると記載していますが、今回のケースでは2月1日に法人を設立しようとしているので、2ヶ月で1期目の終わりを迎えます。決算を税理士の方にお願いする場合は、設立後すぐに決算に関する税理士費用が発生してしまうだけでなく、会社設立後の消費税免税期間が短くなってしまいます消費税免税期間は2年ではなく2期であるため、1期をなるべく長く設けた方がお得です。

POINT 7.複数人で出資する場合は、株式数に差を設けデッドロックを避けよう

最後となる第6章「附則」で気をつけたいのは、第34条「発起人の氏名ほか」です。

出資者が複数人である場合、均等に出資してしまう(今回の場合50株ずつ)と、意見が対立した場合にデッドロックが生じます。また先述したように、今回は100株までしか発行できないので、1%未満での株式譲渡ができません。変更はできますが、その度に株主総会決議や登記が必要となるため、最初の時点で細かいところまで考慮し、設定しておきましょう。

POINT 8.特定創業支援事業について、調べておこう

法人設立の際は特定創業支援事業を受けられるかどうかきちんと調べ、受けられるものがある場合はぜひ受けましょう。一般的には、下記のような支援を受けられる場合があります。


自治体によって、具体的な内容や受けるための条件・手続きが異なるため、詳しくは本店所在地となる自治体にお問い合わせください。また、支援を受けるためには1週間に1回の面談を4回以上受ける必要があることもあるので(合計4週間以上の期間が必要)、早めに調べて準備しておくことをおすすめします。

設立の際は、ぜひ周りの経営者や士業へ相談を

プレゼンテーションの最後に、阿部司法書士は、次のようなメッセージを残してくれました。

昔は、株主が5人以上かつ資本金が1000万円以上必要など、法人設立のハードルは高かったのですが、現在は資本金1円〜と法人を設立しやすくなりました。

そして、昔よりも会社設立が身近になった分、自分で手続きを行うという方も増えましたが、設立の際はぜひ周りの経営者や士業に相談してほしいと考えています。これは、絶対に司法書士に相談するべきだという意味ではなく、ビジネスをやっていく上で仲間を作って欲しいからです。

やはり経営者は孤独な方が多く、親族や同僚に相談することができないケースが少なくありません。であれば、同じ状況を乗り越えたことがある経営者、あるいは多くの経営者に寄り添ってきた士業と繋がることで、トラブルを回避し、損をしない経営を目指してほしいと考えています。

私は法人設立手続きをメインに、年間300社以上のお手伝いをさせていただいています。根本的にお客さんがビジネスで成功することを1番に願っているので、お客さん同士のビジネスがマッチしそうであれば、人と人を繋いだりもしています。そういう士業の方は他にもたくさんいるはずなので、士業に依頼する際は“こういう事業をやっていこうと思っているのですが、こういうお客さんとか先生のお客さんにいらっしゃらないですか”と聞いてみるのも一つの手だと思います。「こういうサービスを受けたい、買いたい」といった相談でも、もちろん大丈夫です。

起業にあたり知識や資金も大切ですが、ぜひ周りに相談できる経営者や士業の方、仲間を作っていってみてください

8つのポイントに気をつけ、損をしない登記・経営を

今回のイベントで、阿部司法書士がレクチャーしてくれた定款のポイントは以下です。

POINT 1.「目的」には将来的に予定している事業も記載しよう
POINT 2.「本店所在地」は市町村(区)までの記載でOK
POINT 3.電子は意外とお得じゃない場合も?「公告方法」は官報がおすすめ
POINT 4.発行可能株式総数は、多めに設定しておこう
POINT 5.取締役の任期は短すぎても長すぎてもNG
POINT 6.消費税免税期間や決算の税理士依頼費を考慮し、事業年度を設定しよう
POINT 7.複数人で出資する場合は、株式数に差を設けデッドロックを避けよう
POINT 8.特定創業支援事業について、調べておこう

定款作成は、法人設立におけるとても大きなファーストステップ。上記のポイントに気をつけ、必要に応じて経営者や士業の方にも頼りつつ、損をしない経営を目指しましょう。

西大井創業支援センターでは、連携専門家へ無料相談も受け付けています(月に1度、同じ専門家への同じ質問は1度まで無料)。阿部司法書士に相談がある方は、西大井創業支援センター(PORT2401)までお問い合わせください。